超古代文明は存在するのか? 人類史の常識を塗り替える謎に迫ったグラハム・ハンコックの最新作『人類前史』(レビュー)
彼らはなぜ消えたのか?
ハンコックは1万2800年前に起きたヤンガードリアス隕石群の衝突が原因ではないか? と予測している。北米大陸を中心にユーラシア大陸のおよそ半分に降り注いだヤンガードリアス隕石群は大火災を引き起こし、さらに巻き上がった噴煙はその後に氷河期を発生させた。 地上の約1割の動植物を焼き尽くし、35種の哺乳動物を全滅させたヤンガードリアス隕石の大災害は、当時、おそらくあっただろう超古代文明をも消滅させた。彼の文明は当時の狩猟民族である、私たちの文明の直系の先祖たちに受け継がれ、ピラミッドに代表される巨石遺構として伝えられた。 ヤンガードリアス隕石群の衝突が想像を絶する大災害をもたらしたとしても、彼ら超古代文明人の痕跡が一切消え去っているのは妙だとハンコックは言う。残されているアースワークは、非常識なほど古いが、それはあくまで超古代文明人から教えられた技術の名残りだ。ピラミッドを作ったのはエジプト人であって、超古代文明人ではないのだ。 ハンコックは言う、彼らは現在の私たちとはまったく違う科学体系を築いていた可能性がある。だからこそ彼らの直接的な遺構や文化は残されていないのだ。その鍵は「死」にある。古代文明に共通する死者の書、死んだ後、魂がどのような運命をたどるのかが書かれた書物には、オリオン座と天の川が出てくる。超古代文明人は、現在の私たちのすべてが物質に還元されるという一元論ではなく、肉とそれを司る魂があるという二元論に基づく文明を築き上げていたらしい。魂が存在すると世界はどのように変わるのか? そこから生まれる文明とは何か? 想像を超える結論に戦慄してほしい。そして誰もが、本書を読んだ後、本を前に考えることになるだろう。 私たちは……どこから来て、どこへ行くのか? [レビュアー]川口友万(サイエンスライター) 協力:双葉社 COLORFUL Book Bang編集部 新潮社
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