ニトリが初の格付け「ダブルAマイナス」取得! 狙いは社債発行とM&Aか(小林佳樹)
【経済ニュースの核心】 ニトリホールディングスは5月22日、日本格付研究所(JCR)から長期発行体格付けとして「ダブルAマイナス」を取得したと発表した。同社が格付けを取るのは1989年9月に札幌証券取引所に上場してから初めてとなる。 経済アナリストの森永康平氏「円安を止めるために『金利を上げるべき』と主張する人がいるのは問題」 ■財務内容の堅牢さも評価 「ダブルAマイナス」という高格付けを付与した理由について、JCRは「ニトリHDは海外からの商品仕入れが主体であるため業績は為替の変動影響を受けるものの、新商品の開発や原価低減などで収益力強化が見込まれる」こと。国内外で積極的な出店があっても「キャッシュフロー創出力の向上などを考慮すれば財務が大幅に悪化する可能性は低い」と説明している。ニトリHDの自己資本比率は72.4%(24年3月末)と高水準で、財務内容の堅牢さも評価された格好だ。 ただ、「ニトリは、これまで36年連続で更新し続けてきた増収増益が止まったばかり。更なる成長には何らかのプラスアルファが必要だろう」(メガバンク幹部)との指摘も聞かれる。
円安の影響で約380億円の減益
ニトリHDが5月14日に発表した24年3月期決算は、売上高が8957億9900万円、純利益が865億2300万円だった。前年から決算期を2月から3月に変更しているため、単純比較はできないが、22年2月から23年3月までの13カ月だった前年と比べると、売上高は5.5%減、純利益は9.0%減の減収減益となった。節約志向などでニトリ店舗の客数は前年に比べて1.3%減となったほか、「為替の見通しを誤ったことが主因」(大手証券幹部)とされる。 ニトリHDは前期、想定為替レートを1ドル=130円に設定していたが、実際は、期中平均で1ドル=145円と円安に振れたことで、経常利益ベースで約380億円の減益要因となった。「ニトリは対ドルで1円円安になると、経常利益ベースで年間20億円の減益要因となる」(同)ためだ。 一方、25年3月期は、国内店舗の売り上げ対策として家電を強化するほか、海外店舗の出店も強化し、売上高は前年比7.2%増の9600億円、純利益が同6.3%増の920億円を見込むが、再び増収増益路線を確実なものにするためには思い切った施策も想定される。「格付けの取得は、社債発行が視野に入っているもので、調達した資金を何に振り向けるのかが注目されます。ニトリは20年にTOB(株式公開買い付け)で島忠を買収しているが、同じようにM&Aに打って出る可能性もあるのでは」(市場関係者)との見方も浮上している。 (小林佳樹/金融ジャーナリスト)