大竹しのぶ「衝突することもあった」10代の頃を振り返る:インタビュー
女優の大竹しのぶが、映画『インサイド・ヘッド2』(公開中)に日本版声優として出演。前作に引き続き、ライリーの感情の一つであるカナシミを担当した。本作は、『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『リメンバー・ミー』など、数々の心温まる感動の物語を贈り届けてきたディズニー&ピクサー作品。どんな人の中にも広がっている“感情たち”の世界を舞台にした物語を描き、第88回アカデミー賞(R)長編アニメーション賞を受賞した『インサイド・ヘッド』の続編となっている。続編では、シンパイ、ハズカシ、イイナー、ダリィの4つの感情が新たに加わり、少し大人になったライリーの頭の中で大混乱を引き起こす。インタビューでは、9年ぶりに続編が公開され、再びカナシミを演じた心境や、大竹しのぶの10代の頃の思い出について話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】 【写真】大竹しのぶ、撮り下ろしカット ■ライリーの幸せだけを願っているのが、カナシミの役割なんだ ――9年ぶりの本作ですが、再びカナシミを演じた今のお気持ちは? 前作から本当に9年も経ったのかというのが正直な気持ちです。その間コロナ禍があったからなのかもしれないんですけど、2年ぐらいしか経っていない、ライリーの成長と同じような短い時間しか経っていないように感じ、9年ぶりとはとても思えませんでした。 ――今回カナシミを再び演じたことで新たな発見はありましたか。 前作のカナシミは、私の中で悲しいというだけだったのですが、ライリーを喜ばせるために、ライリーの幸せだけを願っているのが、カナシミの役割なんだと思いました。だから悲しくなるし、ヨロコビに活躍してほしいと心から思っているキャラクターなんだなという発見がありました。今作ではライリーの感情たちもコミュニケーションを取らないとうまくいかないなと思いました。前作では喜び、悲しみ、怒りなどがそれぞれ主張するという感じでしたが、協力し合って新しい感情を受け入れるという感じがありました。 ――今回の新キャラクターで気になるキャラクターはいらっしゃいましたか。 ダリィが好きです。 ――大竹さんもダルいなあと思うことは普段からあるのでしょうか。 人前では言わないですけど、ダルいなーって思うことはけっこうあります。仕事をしている時は思わないのですが、休日になると疲れがどっと出るのか、ソファーから動けないとか、なにもしたくないといった感じになります。休日はあったほうがいいのですが、ダルくなってしまうのはとても悲しいです(笑)。 ――本作ではライリーが大人になっていく過程が描かれています。大竹さんご自身のティーンエイジャーだった頃の思い出はありますか。 とにかく活発だったし、クラスの子を引っ張っていくタイプでした。やっぱり引っ張っていくがゆえの衝突することもありました。例えば文化祭でクラスでお芝居をやることになって、私が先頭に立って引っ張っていくのですが、それこそお芝居をやることがダルいと逃げてしまう男子を追いかけて、「練習しなさい!」って言ったり。思春期の私はそういう感じの子で、いま考えるとけっこう自分勝手なこともやっていたなと思います。 ――両親にあたったりした経験は? 父は病気、母はずっと働いていたというのもあったので、両親に反発したりというのはなかったです。また、私の子供たちも私に反発するということはなかったです。ただ長男は学校の先生に対して反発することがあり、学校に行きたくないとか悩んでいたことはありました。 ――それはどのように対処されたのですか。 女性の先生だったので、「女性には更年期っていうものがあるんだよ」って教えました。そうしたら中学の思い出というテーマの作文で、女性には更年期があって、無意味にイライラすることがあると母に言われたが、僕はそれでも嫌だったみたいなことを書いてしまって。そのため、学校に何度も呼び出されることになりました。でも、先生が間違っていると思う事もあったので、私は「それは違うと思います」と先生と言い合いになることもしばしばありました。 ■悲しかったからこそわかるいいこともある ――今回の作品の中で嫌な思い出を捨ててしまう描写があるんですけど、このシーンに対して大竹さんは共感しますか。もしくはご自身の中で捨ててしまいたい記憶や思い出はありますか。 そこはすごくいいシーンだなと思いました。やっぱり嫌なことは忘れていこう、良い思い出だけを胸にしまって生きていこう、というのはすごく素敵な考え方だなと共感しました。その考え方があるからこそ、人は前向きに生きていけるのだろうなと思います。 ――大竹さんは嫌なことがあっても忘れていくタイプですか。 私の場合、嫌なことはどんどん流していきます。ただ、悲しい記憶って嫌な思い出もあると思いますが、覚えておいた方がいいこともあります。悲しかったからこそわかるいいこともあるんです。ただ、怒った記憶とかイライラした記憶は忘れてしまってもいいかもしれないですね。 ――どのようなことで悲しくなることがありますか。 人との別れもそうですし、それは悲しいけどきちんと覚えておきたい記憶です。『インサイド・ヘッド2』に出てくる感情というのは、人間にとって必要な感情なんだろうなと思います。一つ欠けても前に進めないと思いますし、改めてよくできている作品だと思います。ただ、子どもは単純でなければいけないと思います。まだ子どもなのに、そこにシンパイやハズカシ、ダリィという感情はまだいらなくて、ヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、イカリ、ビビリといった前作に登場した感情だけで良いなとすごく思いました。 ――子どもが観るとシンプルに楽しめる映画だと思いますが、大人が観るといろいろ考えさせられる映画だと思いました。大竹さんはどのような人に観てほしいですか。 子どもが観たらどう感じるんだろうというのは興味はあります。大人、子育てをされている親御さんにも観てほしいですし、若い人にも観てほしい作品です。 ――本作からどんなことを感じてもらえたら嬉しいですか。 人は喜びを中心に世界が出来上がっていくことを意識して生きていけたらいいなと思っていて、ヨロコビという感情をみんなで支えるといいますか、他の感情は控えめにして、サポートする役割を担うような感じがいいです。シンパイもイカリもビビリも必要なんだけど、「やっぱり中心にいるのは“ヨロコビ”だ」という世界になればいいなと、この映画を観て思ってもらえたら嬉しいです。 (おわり)