本格焼酎、伸びしろしかない! 今は日本酒に遠く及ばない海外知名度だけれど…ユネスコ登録を追い風に、鹿児島の本気が試される
本格焼酎など日本の「伝統的酒造り」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。政府は国産酒類の輸出拡大や観光振興、地域活性化に結びつけたい考えだが、焼酎は日本酒(清酒)と比べて海外での認知度が低い。鹿児島県内の関係者は「焼酎はこれから」と登録を追い風に、輸出拡大や訪日客の蔵元ツアー増加といった好循環に期待を寄せる。 【写真】〈関連〉焼酎と清酒の輸出量にはこれだけの差が…違いをグラフで見比べるとよく分かる
「日本酒も海外人気を得るまで10年かかった」と話すのは知覧醸造(南九州市)の森暢社長(55)。地元産の芋と茶を使う「知覧Tea酎」は、2021年のフランスでの国際品評会で最高賞だった。ただ同国での引き合いは受賞直後の一度切りで、取引の継続には焼酎自体になじみを持ってもらう必要を痛感した。「ユネスコ登録はいい機会。業界全体で盛り上げたい」 県酒造組合によると、県産焼酎の輸出量は正式に記録を取り始めた18年度(4月~翌年3月)以降、429~700キロリットルで推移。酒造年度(7月~6月)で比較すると、全体出荷量の1%にも満たない。一方の清酒は、新型コロナウイルス禍や中国の景気後退などで落ち込みはあるものの、この10年でほぼ倍増した。 県は17年度から、国内外であるアジアやヨーロッパ向けの商談会や展示会参加を後押しする。米国への焼酎輸出拡大を目指し21年度からは宮崎、熊本、大分との4県合同プロジェクトもスタート。登録勧告となった11月中旬には、米国の著名バーテンダーらを招いた産地視察などを開いた。
県販路拡大・輸出促進課の牧元禎治課長は「バーテンダーやバイヤーなど、現地で影響力がある人に焼酎への理解を深めてもらうことが普及には効果的。今はまだ種まきの時期。官民連携で地道な活動を続ける」と意気込む。 登録では、日本の風土や気候に合わせながら、杜氏(とうじ)らが手作業で洗練してきた背景も評価された。観光業界では、日本の酒造り文化を知りたい外国人が増えると見る。県観光連盟は11月、台湾の飲食店経営者による焼酎ツアーを支援。約30人が原料の芋畑や蔵元を巡り焼酎への理解を深めた。 海外誘致部の高江奉子マネジャーは「ユネスコ登録により、有名な観光地でなくとも蔵元がある地域に人を呼び込める。現地で味わった焼酎や産物を帰国後に購入することも見込める」。100を超す蔵元がある「焼酎王国」の特色が、地域活性化へつながる可能性に期待した。
南日本新聞 | 鹿児島