【漫画家に聞く】個性的で“つい見ちゃう”同級生、無個性な自分となぜ友達に? 高校生男子の日常描くSNS漫画が痛快
自分に個性がないことに悩む少年・斉藤くんと、個性的すぎる少年・桜田くんの交流を描いた漫画『斉藤くんは桜田くんに強火』が2024年4月にpixivにて投稿された。 漫画『斉藤くんは桜田くんに強火』を読む いつも想像の斜め上をゆく桜田くんに釘付けとなる斉藤くんであったが、どうやら斉藤くんもただ者ではないようでーー。はたして対照的に見える2人は仲良くなれるのか。 怒涛の勢いで展開される本作の作者・月野カヌレさんに本作を創作したきっかけ、斉藤くん・桜田くんを描くなかで意識したことなど、話を聞いた。(あんどうまこと) ーー創作のきっかけを教えてください。 月野カヌレ(以下、月野):去年度まで通っていた漫画の専門学校の課題作として、本作を創作しました。シナリオ制作に関する授業の先生がコメディ作品のお好きな方で、自分が考えたギャグをどんどん出したらすごく笑ってくださいました。 あまりコメディ作品は描いたことがなかったのですが、先生に笑ってもらえたことが嬉しかったのでギャグ路線のお話で課題作を描こうと思いました。 また本作を描く前に創作した漫画を出版社に持ち込んだのですが、その際に「普通だ」と言われてしまい……。「なにくそ」と思い、次こそはそんなことを言わせないぞという気概で、ちょっと変な漫画を描くことに挑戦しました。 ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは? 月野:ハルキゲニアが斉藤くんの背中に刺さるところです。ハルキゲニアをモチーフとして出すなか、誰かの背中に刺すこと、刺さった人物の意識が飛ぶことは最初から決めていました。このシーンで読者をいい意味で置き去りにしたかったです。 ーーなぜハルキゲニアを作品のモチーフに? 月野:ハルキゲニアといった不思議な古代生物が好きだからです。また本作の1ページ目で視覚的にインパクトのあるものを出したいと思っていました。冒頭に不思議なものがあれば読者を惹きつけることができるのではないかと考えていました。 ーー桜田くんを描くなかで意識したことを教えてください。 月野:クラスに1人はいる、ちょっと変なやつ。気になって見てしまうような人物にすることを意識していました。ただ途中からは真面目な一面も引き出そうと思いました。 どんなに変わった人でも、異なる一面もあることを表現したいと思い、最後では桜田くんから斉藤くんに突っ込みをさせました。 ーー桜田くんと対照的にも映る斉藤くんを描くなかで意識したことは? 月野:自分では自分のことを普通だと思い込んでいるけれど、内面には尖っている部分がある人物として描きました。読者の方が斉藤くんに突っ込みたくなるように、表情やリアクションが大きくなるように意識しました。とくに斉藤くんが土下座するシーンが好きです。 ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。 月野:漫画を描きはじめたのは専門学校に入学してからでした。小学生のときから漫画を描きたいと思っていたのですが、漫画を描けないまま大人になってしまい……。そんななか大学に通っていたときに小説を創作する授業があり、はじめて物語をつくりました。 完成後に感想を語る会で自分の作品が面白いと言ってもらえ、創作することの面白さを知りました。そういえば漫画が好きだったことを思い出し、漫画の専門学校に通いはじめました。 ーー漫画を描く前と漫画を描きはじめた今、漫画に対する印象は異なる? 月野:ぜんぜん違います。漫画を描くことがすごく面白いと感じるようになりました。自分の好きなキャラクターを考えたり、なにかをつくることそのものが楽しいです。 ーー好きな工程は? 月野:キャラクターの表情を描いているときです。この場面でどんなリアクションをさせようかなと考えているときが1番楽しいです。 またネーム(漫画の設計図となるラフ画)をつくることも好きですね。自分が読んでいて気持ちの良い演出ができるとうれしいです。 ーー今後の目標を教えてください。 月野:とにかくキャラクターが“立つ”漫画を描きたいです。もちろんストーリーも大切ですが「こういう子が好き」「この子いいよね」と、読んでくださった人たちの中でキャラクターの話ができるような漫画にしたいと思っています。 また長期的な目標として、作品で描かれる部分以外の表情や生活が見えるようなキャラクターを描けるようになりたいです。
あんどうまこと