国民スポーツ大会、徳島県内からも改革求める声 費用負担など課題、問われるスポーツ振興策【連載クローズアップ】
今年、国民体育大会(国体)から改称された国民スポーツ大会(国スポ)が岐路に立っている。開催地の財政負担の重さなどを理由に見直しを求める意見が相次いでいる。県内でも競技の普及や生涯スポーツの振興といった観点から一定の意義を訴える競技団体はあるものの、改革は必要との声は多い。 祝!WS初制覇、大谷グラブの現状を緊急調査!! 15日に閉幕した国スポ佐賀大会。徳島県勢2人が入賞したスポーツクライミング会場の「九州クライミングベースSAGA」は約7億円をかけて新設された。26日から開かれる全国障害者スポーツ大会と合わせた佐賀大会の関連経費は約157億円、昨年の鹿児島大会は約251億円を計上。いずれも国からの補助があるものの当地の負担は大きく、今後の施設維持費なども重荷となる。 徳島ではこれまで1953年の四国国体と93年の東四国国体の2回開かれた。県スポーツ振興課によると、香川との共催だった東四国国体では県が約28億円を投じ、鳴門市の鳴門アミノバリューホール(県鳴門総合運動公園体育館)や徳島市ライフル射撃場など計24施設を整備した。 国スポは「国内最大の総合スポーツ大会」という看板を掲げる。とはいえ、国内では各競技で日本選手権など日本一を決める大会が他に複数あり、トップ選手が国スポに出ないといった問題も指摘されている。県内のある競技団体関係者は「権威ある大会は他にたくさんある。選手の派遣費用もかなりかかり、すぐにでも廃止していいと思う」と打ち明ける。 ただ、性急な見直し論に慎重な意見は根強い。佐賀大会で徳島は天皇杯(男女総合成績)の順位を4大会ぶりに46位に上げ、最下位を脱出した。ライフル射撃は優勝を含む入賞者延べ18人が過去最多の62点を獲得。前年の鹿児島大会より17点を増やして順位アップに貢献した。県ライフル射撃連盟の安永潔会長は「県を背負って戦う大きな大会。選手たちはこの大会に向けて努力している。活躍の場として続けてほしい」と存続を求める。 県選手団の中では、若い世代を中心に、国スポならではの意義を訴える声も聞かれた。陸上競技のある選手は「他県の選手と情報交換や交流ができたのがよかった」。スポーツクライミングに出場した高校生選手は「大会を機に徳島で競技への関心が高まるとうれしい」と話した。 県は国スポに向けた競技力向上対策費として毎年約2億数千万円を支出する。本年度は男女総合順位(天皇杯)の得点配分が個人競技より大きい団体競技の上位進出を後押ししようと、四国ブロック予選を勝ち抜いた5人以上の団体競技に1種別当たり15万円(8人以上は20万円)を補助。ただ、団体競技で入賞したのは弓道やソフトテニス、ゴルフ、ラグビー(7人制)など6競技にとどまり、得点の割合は全体の約3割しかなかった。 ある競技団体代表は「国民県民の健康や生きがいづくりに重きをおいた大会に衣替えしたらどうか」と提言。安永会長も「都道府県別に順位を争うような大会でなくていい」と述べ、大会の改革には賛意を示す。 2034年の沖縄大会で国スポは2巡目を終える。3巡目以降はまだ正式決定していない。鳴門教育大の松井敦典教授(スポーツ科学)は「単に廃止論に走るのではなく、スポーツをどのように振興していくのかも併せて幅広く検討するべきだ」と指摘した。やるかやめるかという二元論ではなく、国スポのあるべき姿が問われている。