一時「1ドル=153円」に反落も…金利差の縮小に関係なく、投機筋による「円売り」が進むワケ【国際金融アナリストの見解】
投機筋が「米ドル買い・円売り」を継続するワケ
日米金利差は、長期金利、10年債利回り差で見ても3%以上といった具合に、大幅な米ドル優位・円劣位となっています。それはもちろん、「円売り」にとって圧倒的に有利な要因であり、逆に言えば「円買い」には極めて不利な要因です。そのため、多少の金利差の変動であれば、投機筋の米ドル買い・円売りは、影響を受けずに続いていくと考えられます。 金利差を日米の政策金利で見ると、足下では5%以上と大幅な米ドル優位・円劣位となっています。同じように、日米政策金利差の米ドル優位・円劣位が5%もの幅に拡大したのは2006~2007年にもありました。このとき、CFTC統計の投機筋の円売り越しは、2007年6月に18万枚という過去最高を記録しました(図表4参照)。 この統計の円の売り越しは、普通なら10万枚を超えると「行き過ぎ」が懸念されます。ということは、2007年6月に記録した18万枚は、極端な「行き過ぎ」、すなわち「バブル」の域に達していた、と言えます。 CFTC統計の投機筋の円売り越しは、4月末にほぼ18万枚まで拡大しました。日米金利差の米ドル優位・円劣位のなかで、圧倒的に有利な円売りが「バブル化」する―、最近の円売りは、この2007年の状況と、ほぼ同じ構図で展開していると考えられます。そして、そのような投機筋による「円売りバブル」が、金利差の変化以上に、米ドル/円の変動に影響する状況が、最近にかけて続いてきたのではないでしょうか。 以上を踏まえると、水曜日にCPI発表を前後して米ドル/円が156円台から一時153円台まで約3円と比較的大きく米ドル安・円高に戻したのは、米金利の低下にともなう日米金利差の米ドル優位・円劣位の縮小の影響以上に、投機円売りが円買いに転じた影響が大きかった可能性が高いです。それはなぜか? 上述のように、CPI発表の前日、火曜日の時点で、CFTC統計の投機筋の円売り越しは、12万枚と高水準を維持していました。要するに、米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」が懸念される状況だったようです。そういった「行き過ぎ」が、CPIを受けて米金利低下、金利差の米ドル優位・円劣位の縮小となったことをきっかけに修正に向かったことで、米ドル売り・円買いとなり、比較的大きな米ドル/円の下落をもたらしたことが、その理由でしょう。