佐々木朗希、160キロ台の剛速球をなかなか投げられなかった今季 スライダーの投球術、盗塁を簡単に許さない技術を磨いた濃密な1年
◇記者コラム「Free Talking」 ロッテはクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで日本ハムとの初戦を制した後、2試合続けて先制の2点を逆転され敗退を余儀なくされた。 レギュラーシーズンで日本ハムに6勝18敗1分けと圧倒され続けた今季を象徴するような勢いの差。それだけに第1戦で8イニング無失点と日本ハム打線を封じ、2点のリードを守り切った佐々木朗希投手の好投がより際だったファーストステージでもあった。 その第1戦の1回、佐々木はいきなり先頭打者の浅間を四球で歩かせて無死一塁。ここで打席に迎えたのは7月以降、レギュラーシーズン打率3割3分と絶好調の清宮。敵地エスコンフィールド北海道のファンがいきなり沸き立つ嫌なムードが漂った。佐々木が清宮に対して投じた初球のスライダーはボールになり、2球目のスライダーで1ボール1ストライクの平行カウント。ここで佐々木はいったん軸足をプレート後方に外し、一塁にけん制の偽投をした。その直後に投げた球種は直球ではなく138キロのフォークだったが、捕手の佐藤が素早いストライク送球で浅間の二盗を阻止。初回の失点を防ぐ大きなプレーとなった。 「立ち上がり難しかったんですけど、どうにかアウトを積み重ねて。ランナーのケアもいつもよりはできたかなとは思います」 今季レギュラーシーズンの佐々木は日本ハムに足でかき回され、0勝2敗と勝利を挙げられなかった。5月10日の対戦では野村に2盗塁、水野に1盗塁の計3盗塁を決められ、5イニング3分の2で自己ワーストタイの5失点。8月22日の対戦でも水谷にプロ初盗塁を決められ、これをきっかけに逆転を許し、勝利投手になれなかった。 その苦い経験をポストシーズンに生かした。小野投手コーチは浅間がスタートを切る前、一塁へ偽投のけん制を入れた成長ぶりを高く評価する。 「そういうのを一つ入れるだけでも、全然してこなかったことをしてくるっていう相手に与えるプレッシャーじゃないですけど。ああいうことをするだけでも全然違う。(プレートを)外すだけでもそうですし。スタートを切らせないような工夫というか、間の使い方とか、その辺はだいぶ意識してやっているなというのが見えました」 浅間を刺した捕手の佐藤は第1戦の試合後、「僕1人というより、バッテリーの共同作業だと思っているので」と強調した。160キロ台の剛速球をなかなか投げられなかった今季。昨年まであまり見られなかったスライダーでカウントを稼ぎ、さらにはそのスライダーで打ち取っていく投球術だけでなく、盗塁を簡単には許さない技術も磨いていった濃密な1年となった。(千葉亨)
中日スポーツ