コラム「旅作家 小林希の島日和」 島はミステリーの宝庫!
11月に、「島の宝観光連盟」のイベントが開催された。当連盟は、佐渡島(新潟県)、隠岐諸島(島根県)、壱岐島(長崎県)、天草諸島(熊本県)、五島列島(長崎県)の観光協会や観光地域づくり法人などが加盟する組織で、「島が日本をリードする」を合言葉に、島々の魅力を一緒に発信している。私も島旅アンバサダーとして参画中だ。 さて、年に一度、当連盟主催のイベントを東京で開催しており、今年も企画を考えることになった。来場者は島に詳しい人たちも結構多い。 「だったら、もっとマニアックな企画にしましょう!」と、勢いで提案したのは、ミステリーマガジン『ムー』とのコラボイベントだ。各島が自分の島のミステリーを発表し、『ムー』の編集長に深掘り、考察してもらうのだ。ミステリーとは、古くから島にある伝説や昔話、伝統文化などで、その意味や教え、起源を改めて調査することで、島の人も勉強になるし、人口減で失われつつある昔話などを承継する機会にもなる。という大義で、各島がミステリーを調査することになった。 一方、当日お越しいただくことになった「webムー」の編集長は、「不思議や超常現象、都市伝説なんかは専門ですが、行ったことない島がたくさんあって楽しみです」と、発表を待ち侘(わ)びてくれた。 当日、佐渡島は島々の生活に関わってきた妖怪伝説を、隠岐諸島は島内で採れる黒曜石から古代人の交流の足跡を、壱岐島は弥生時代以降に大陸から伝来した卜骨(ぼっこつ)・亀卜(きぼく)による占いを、五島列島は海に沈む伝説の「高麗島」を、天草諸島は天草四郎と知られざる妖怪伝説を発表した。 いずれもガイドブックにほぼ掲載されたことがない情報で、島の面白さが浮き彫りになった。 壱岐島の話では、「古代律令国家では卜部(うらべ)という祭祀(占い)をする一族がいて、伊豆から5人、壱岐から5人、対馬から10人が朝廷で活躍していました。実は、壱岐には今も卜部の末裔(まつえい)がいて、島の人たちは人生の転換期に占いをしてもらうんです。その名も、〝おたずね〟。公になっていませんが」とあり、webムーの編集長は「亀卜という一種の術が今に伝わって残っているのが凄(すご)い」と応えた。私も、亀卜習俗は日本で唯一対馬の豆酘(つつ)地区に残っていると聞いていたので驚きだった。 島は、幾つものレイヤーが重なって、何かのきっかけがないと辿(たど)り着けない顔がある。まさにミステリーの宝庫である。そして、そこに日本の民族性や文化の源が見えてくる。 【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 51からの転載】 KOBAYASHI Nozomi 1982年生まれ。出版社を退社し2011年末から世界放浪の旅を始め、14年作家デビュー。香川県の離島「広島」で住民たちと「島プロジェクト」を立ち上げ、古民家を再生しゲストハウスをつくるなど、島の活性化にも取り組む。19年日本旅客船協会の船旅アンバサダー、22年島の宝観光連盟の島旅アンバサダー、本州四国連絡高速道路会社主催のせとうちアンバサダー。新刊「もっと!週末海外」(ワニブックス)など著書多数。