小3までだった「短時間勤務」。その延長が、会社の制度として認められるまで【障がい児を育てながら働く⑭】
―― そのころ、工藤さんのお子さんは小学校3年生。会社が短時間勤務の延長を認めてくれなければ仕事を辞めざるを得ない……。 当時は職場の理解があり、所属長の運用で、今後も短時間勤務をさせてくれるかもしれない状況でした。ですが、上司次第というのは先行きが不透明すぎます。人事異動によって、上司がかわったり、自分が他に移った場合、その後の見通しが立ちません。 と同時に、人の顔色をうかがわずに胸を張って堂々と働き続けたいとも思っていました。 しかし、“健常児の育ち”を基準に制度設計されている両立支援制度は、障がい児や医療的ケア児を育てながら働く社員には無理があります。そこで、ケアが必要な子は、子の年齢ではなく、それぞれの子の状態に応じて短時間勤務の利用を延長できるよう配慮してほしい、とお願いしました。 ―― どのようなお返事がありましたか? 私の窮状に静かに耳を傾けていた労務部長は、「工藤さん、社内に仲間はいないの? 数人でいいから、有志の会を作って、組合を通じて、労使協議してもらうといいんじゃないかな」「ワークライフバランスの協議は3ヵ月後にあるから、すぐに労働組合に戻って、それまでに作ってみて」と助言をしてくださいました。 一瞬、私はきょとんとしてしまいました。 数日前、懇談会で労務担当役員から「個別の案件には……応えにくいんだよね」と言われて絶望的になっていましたが、労務部長は“ない制度”を作っていくときの道筋を示してくださったんですよね。個別の案件の場合は対応しがたいけれど、その声が複数集まれば“個別”ではなくなり、協議を進めやすくなるんです。目からうろこでした。
工藤 さほ
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