「死にたい」否定せずに共感を 長崎いのちの電話30周年 精神科医の松本氏が講演
自殺予防を目的に電話相談を受け付けている社会福祉法人「長崎いのちの電話」の開局30周年記念公開講演会が3日、長崎市内であり、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長の松本俊彦医師が、自殺を考える人との向き合い方について話した。 松本氏は、社会が「自殺」という言葉をタブー視し、使用を避けると、実際に自殺を考える人が「死にたい」という気持ちを隠すようになると指摘。「相手の『死にたい』という気持ちを見逃さないことが大切。気になる人には、ストレートに『自殺』という言葉を用いて質問した方が良い」とアドバイスした。 若年層のリストカットやオーバードーズ(過剰摂取)について、行為自体が自殺につながるリスクは低く、多くが現実の怒りや不安を軽減するために行っていると解説。その一方で、徐々にエスカレートし、最終的に自殺に至る可能性もあるとして、「長期的には自殺の危険因子だが、短期的には自殺の保護因子になりうる」と説明した。自傷行為を否定したり、性急な変化を求めたりせず、丁寧な経過観察や共感が必要との考えを示した。 大人も同様に、現実の問題やつらい気持ちへの対処として自殺を選んでいることが多いとし、「『助かりたい』と『助かりたくない』がせめぎ合い、最後まで迷っている。『死にたい』という言葉を頭ごなしに否定せず、落ち着いて対処すれば活路が見いだせる可能性がある」と締めくくった。講演会は約130人が聴講した。