安倍首相の米議会演説 アメリカはどう聞いたか?
「顔が見える」首相
それでも今回の首相演説の価値は揺るがないと思います。たとえ少数の人に対してでも、ジョークのセンスもある『人間味がある』ところが垣間見えたのが大きいと思います。そもそも今年2月にピューリサーチセンターが行った調査では安倍首相のことを「聞いたことがない」と答えていたのが73%でしたが、今回の訪米で知名度は確実に上がっているはずです(同じ調査で作家の村上春樹のことを「聞いたことがない」としたのは69%でしたので、この数字の解釈は難しいところです)。前述のように東アジアとの関係改善など、演説の内容的には課題も残っていますが、「日本の顔」である首相がたとえ少数の間でもアメリカ国民の印象に残ったことは、日米関係の大きな第一歩だったのではないでしょうか。 (上智大学教授・前嶋和弘)
■前嶋和弘(まえしま・かずひろ) 上智大学総合グローバル学部教授。専門はアメリカ現代政治。上智大学外国語学部英語学科卒業後,ジョージタウン大学大学院政治修士課程修了(MA),メリーランド大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。主要著作は『アメリカ政治とメディア:政治のインフラから政治の主役になるマスメディア』(単著,北樹出版,2011年)、『オバマ後のアメリカ政治:2012年大統領選挙と分断された政治の行方』(共編著,東信堂,2014年)、『ネット選挙が変える政治と社会:日米韓における新たな「公共圏」の姿』(共編著,慶応義塾大学出版会,2013年)