JAL安全上トラブル5件「一拍置こう、声をかけよう」を再発防止の合言葉に…「禁酒」も徹底
日本航空で昨年11月~今年5月、5件の安全上のトラブルが相次いだ問題で、日航は11日、社内で取りまとめた再発防止策を国土交通省に提出した。このうち福岡空港などで発生した2件の停止線越えでは、パイロットが遅延への重圧を受け、組織として「定時運航よりも安全性を優先できていなかった」と認めた。
日航の鳥取三津子社長はこの日、国交省航空局を訪れ、5件の事実関係や対策をまとめた文書を同局幹部に手渡した。報道各社には「安全を大前提として仕事を進められる環境が整っていなかった。しっかり立て直し、グループ一丸で安全を守り抜きたい」と語った。
日航は提出、公表した文書の中で、5月に福岡空港で滑走路手前の停止線を越えた羽田行きの便が、福岡と羽田の両空港で、駐機場との位置関係や向きなどから離着陸に時間を要する滑走路を使う予定だったとし、パイロットに「さらなる遅延が予想され、プレッシャーがかかっていた可能性がある」と認定した。
今年2月に起きた米サンディエゴ国際空港での停止線越えでも同じく「大幅な遅延への(時間的な)プレッシャーがかかっていた可能性がある」として、これら2件ともに「安全性を優先し、必要があれば立ち止まって確認することを浸透させられていなかった」と組織的な要因を挙げた。
また、5月に羽田空港の駐機場で発生した牽引(けんいん)中の日航機同士による接触事故も、地上作業員が「(周囲が)自分を待っているという見えないプレッシャーを感じた」と明かした。
その上で、安全上のトラブルが短期間で5件続いた要因として、▽時間へのプレッシャーや焦りにより、停止線通過などの重要なタイミングで十分な注意を向けられなかった▽過去や直近の類似事例での対策実施後のフォローアップ(事後点検)などが不十分だった――とまとめた。
再発防止策では、対応を緊急、短期、中長期の3段階に分け、今月末まで「一拍置こう、声をかけよう」を合言葉に安全再確認・強化月間を実施。米ダラスの滞在先で機長が深酔いした問題を受け、全パイロットと客室乗務員に滞在先での「禁酒」を徹底していることも明かした。
社内の安全管理システムの課題を洗い出し、問題を報告しやすい環境の整備や安全管理を行う体制の強化などを盛り込んだ対応計画も9月末までに策定する。