広島・緒方監督の時代錯誤“鉄拳制裁”は謝罪と厳重注意の大甘処分で済ますべき問題なのか?
衝撃の事実が発表された。広島の緒方孝市監督(50)が全力疾走を怠った野間峻祥外野手(26)に時代錯誤の“鉄拳制裁”を与えていたというのだ。高校野球でも体罰は問題視され、撲滅の方向に進んでいる時代(いまだに完全消滅はできないが)に、その野球界の頂点にあるはずのプロ野球の監督が選手に指導と称して手をあげていたというから開いた口が塞がらない。 発表によると事件が起きたのは、6月30日の横浜DeNA戦の試合後の監督室。この試合、2―2で迎えた延長11回1死で、途中出場していた野間の打球は、あたり損ねの投手前へのフライになったが、ノーバウンドで捕球されると判断した野間は全力で走っていなかった。結局、エスコバーはノーバウンドで捕球できなかったが、緩慢な走塁が仇となってアウトとなり試合は引き分けに終わった。試合後、緒方監督は監督室に野間を呼び、叱責と同時に平手で複数回殴ったという。 複数の報道によると、衝撃事実を発表した鈴木清明球団本部長は、行き過ぎた指導だったが、暴力は常習ではなく、両者の信頼関係は壊れておらず、野間も監督の気持ちを理解しており「暴力だととらえていない」と発言したようだが、理由や背景がどうであれ体罰を伴う指導は暴力以外の何ものでもない。緒方監督は、15日の試合前に全員に謝罪、球団は、同日、厳重注意という“大甘処分”を緒方監督に下しているが、それで済まされる問題だろうか。 アマチュアスポーツ界では、体罰が大きな問題となり、各団体、組織が再発防止策を必死に講じている。その現状に逆行するような行為をプロの監督が行っていたとは言語道断。子供たちに夢を与えるべきプロ野球のトップがいったい何をやっているのだ。 スポーツ心理学の権威である東海大体育学部の高妻容一教授に以前、指導者におけるパワハラ問題について意見を聞いたことがある。 高妻教授は「昔は、選手を怒る、殴るという指導しかできない人が少なくありませんでした。いわゆるパワハラです。でも、そういう指導者は、選手を説得するだけのコミュニケーション能力がないということなんです。理論、信念に裏づけされた指導能力があれば、そういう行為をせずとも選手のパフォーマンス、チームのパフォーマンスをアップすることはできます。そういう指導能力のない昔風の指導者ほど勝てば“オレのおかげ”、負けたら“選手のせいだ”とやるんです。逆に指導能力の高い人は負けて“オレが悪かった、責任はオレにある”とコメントするのです」と分析していた。 殴ることでしか指導できない人は、そもそも指導者としての能力、資格がないのだ。