【戦慄の相続現場】親に尽くした子だけがなぜか不幸になる「遺言書+資産内容」の典型例
両親と没交渉の長男、母親の死後に堂々「遺留分」を請求
60代の佐藤さんは、3人きょうだいの長女です。きょうだい構成は、1番目が長男、2番目が佐藤さん、3番目が妹です。両親と折り合いの悪かった長男は、大学を卒業後すると実家を離れ、その後はほとんど没交渉となっていました。 両親が高齢となり介護が必要になると、独身の佐藤さんは離職して介護を一手に引き受けました。結婚して新幹線の距離に暮らす二女は、月に数回通って佐藤さんを手伝っていました。 先に父親が亡くなり、続いて母親が亡くなりましたが、母親は自筆の遺言書を残していたため、佐藤さんと妹は家庭裁判所に検認手続きを申請し、検認を受けました。 自筆証書遺言には、 「自宅は長女、預金は二女に相続させる。」 付言事項に、 「介護してくれた長女・二女に感謝している。長男は遺言の内容を理解し、請求をしないこと。これからはきょうだい仲よく助け合うように」 と、書かれていました。 ところが長男は、この内容を一笑。当然のごとく遺留分請求をしてきました。 佐藤さんきょうだいは、まだ「長男は跡取り」という意識が残る世代ですが、兄は大学生卒業後、そのまま両親とも妹たちとも疎遠になっています。佐藤さんの両親も兄に頼ることはあきらめ、ずっと長女の佐藤さんを頼ってきたのです。 佐藤さんは施設入居を拒否する両親の介護のため離職してしまい、いまはパート収入しかありません。遺産の預貯金はごくわずかで、兄へ遺留分を支払うには、やはり自宅の売却しか方法がないため、頭を抱えています。
「苦労した子へのねぎらい」「きょうだい仲よく」親の思いは届かず
同様の事例は枚挙にいとまがなく、いずれも「きょうだい仲よく」「遺留分は請求しないこと」といった付言事項があることも、ほぼ共通しています。 亡くなった方の意思や気持ちは汲み取れますが、遺留分を侵害されている人にはさっぱり響かないようで、遺留分の請求がなされるケースが大半です。 また、このような相続トラブルになる場合、遺産のほとんどが自宅不動産で、それなりの価値がある物件であることも共通しています。 遺言書を残し、自宅不動産を相続させる人を指定したものの、遺産の大部分が自宅土地のため、遺留分の請求がなされると、不動産を売却するしか方法がないのです。