専大松戸・原の悲劇。なぜ2段モーションに統一見解がなかったのか。
それは甲子園の悲劇だったのかもしれない。 大会2日目の第一試合の花巻東(岩手)対専大松戸(千葉)は、今秋のドラフト候補の花巻東の左腕、高橋と、専大松戸、原の好投手対決。185センチ、85キロの恵まれた体格から真っ向勝負してくる本格派の原は、THEPAGEで、かつてヤクルトで名スカウトとして鳴らした片岡宏雄氏が、事前に「注目の逸材」としてピックアップしていた投手の一人だった。 だがその原は5四死球と乱れ、4点を失い5回途中で降板。後を受けた角谷がその後を無失点に抑えたが、好投手の高橋を相手にしての4点は重く、涙を飲んだ。原が大舞台で本来の力を発揮できなかった理由のひとつが、球審から再三にわたって受けた「2段モーション」に関する注意だ。 一回、トップバッターをショートゴロに打ち取ると、球審がマウンドに駆け寄ってきた。原は笑顔でうなずいていたが、高く上げた左足を下げていく最後にグイグイと2度、揺らして弾みをつけるフォームを「2段モーション」と、指摘されたのである。下げていく左足は、揺れていて明らかな静止はしていないが、スッと下ろさない部分を「2段モーション」と判断されたのだろう。 原自身が「(球審に2段モーションを)5、6回は言われました」と、試合後にコメントを残すほど、球審はイニング途中にもベンチ前で注意するなど再三に渡って指摘した。1球も反則投球とはジャッジされなかったが、県大会で一度もそういう指摘を受けていなかった原は、明らかに動揺。2回にはストライクが入らなくなり、先頭打者に四球を与え、バントで送られたあと四球と死球で満塁にしてしまい、ラストバッターのピッチャーの高橋に先制2点タイムリーを浴びた。3、5回にも得点を与え、5回途中での降板。原自身は試合後、2段モーション問題を一切言い訳にしなかったが、フォームを気にする余り制球は乱れた。 「大会に向けて2段モーションを修正してこなかった原と指導者に問題があった」という意見もあるだろう。だが、原の投球フォームが、2段モーションかどうかという議論と、同時に、県大会でOKだった投球フォームがなぜ甲子園ではアウトなのかという疑念が沸く。 試合後、専大松戸サイドは、「ピッチャーの自己責任」と潔かった。もし、千葉県大会で投球フォームが2段モーションだと問題になっていたり、事前に高野連から2段モーションに関する指摘を受けていれば、短期間の間にできる限りの修正を試みていただろう。実際、指摘される場合を想定して準備もしていたとも言う。“反則を犯しても勝ちたい”などという悪意が学校側にまったくないのだから、問題はむしろ県大会ではOKで、甲子園ではアウトという基準の曖昧な審判団、高野連側にあるのではないか。即、反則投球とは、とらずに注意に収めたのが、審判団の良心だったのかもしれないが、後味は悪い。