安定を捨てた男・小林謙太が送った、素晴らしきフットサル人生【 #人生に刻むラストゲーム|Fリーグ】
仕事を辞めて選んだフットサルの道。クラブと共にF1へ
クラブのFリーグ参入決定後、チームの中心選手に成長していた小林にも契約更新の打診があった。最初は趣味でフットサルを始めた男が、遂に全国リーグのピッチに立つ権利を得たのだ。 しかし、すぐにでも快諾したい気持ちでいた小林には、一つクリアしなければならない問題があった。Fリーグ参入に伴い、チームの練習時間が午前中に変更。プレーを続けるには、フルタイムで正社員として勤めていたTOTOを退職しなければならなくなったのだ。 「Fリーグでプレーしたいと言ったら、会社の同僚や周りの友人をはじめ、お世話になっている人たちのほとんどに反対されました(笑)。『安定した仕事を捨ててまでやることか?』と。でも、当時の中村GMや馬場監督の情熱を見て、ついていきたいと思ったんです。一度きりの人生ですし、“フットサルは今しかできない”と。覚悟を固めて、5年間勤めた会社を辞めることに決めました」 退路を断ちフットサルに懸けた小林は、Fリーグ挑戦1年目から輝きを放った。2018-2019シーズンのF2開幕戦。トルエーラ柏(現しながわシティ)との試合にスタメンでピッチに立つと、開始わずか30秒でネットを揺らし、記念すべきクラブのFリーグ初ゴールをマークした。その年は3位でリーグ戦を終え、個人としても13試合出場7ゴールという記録を残している。翌2019-2020シーズンはリーグ戦2位でフィニッシュ。そのシーズンは上位2チームが自動昇格となったため、遂にクラブがかねてより目標に掲げていたトップカテゴリー昇格を果たすこととなった。 F1に昇格した頃には、九州リーグ時代を知る選手は小林ただ一人となっていた。ちょうどABEMAがF1全132試合生中継を始めたタイミングでもあったため、地域リーグ時代からクラブと共にF1の舞台まで駆け上がってきたそのストーリーが、ファンの間でも広く知れ渡ることに。北九州サポーターのみならず多くの人々の共感を呼び、いつしか小林はクラブのバンディエラと呼ばれるようになっていった。