実力主義のウソ…ゴールドマンサックスNY本社が実績ある社員を「クビ」にした「まさかの理由」
世界トップクラスの地位と報酬が約束されたゴールドマン・サックス。だがその実態は、金と女性に対するおそるべき強欲、嫉妬にまみれた職場だった――。 【マンガ】約20年前にマイクロソフト株を「100万円」買ってたら今いくら? 同社の元マネージング・ディレクター(上位8%の幹部職)の女性が1998~2016年の在職期間に目撃した、ミソジニー(女性嫌悪)と人種差別にあふれる、堕ちた企業風土を明らかにする衝撃の暴露本『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』から、一部内容を抜粋してお届けする。 巨額の退職金を捨てて、秘密保持契約書(NDA)へのサインを拒否。同社の内幕を告発する道を選んだ彼女の回顧録を読み進めるうちに明らかになる、金融資本主義の欺瞞と、その背後にある差別的な思考とは?
戦々恐々と過ごした日々
9月半ば、リーマン・ブラザーズが破綻した。次の日には、連邦準備制度理事会が大手保険会社AIGの救済を発表した。それからの数週間、多くの企業が短期的に資金を置いているマネー・マーケット・ファンドで、2千億ドル近い損失が出た。 誰もが、次に破綻するのはゴールドマンかもしれないと恐れながら日々を送った。うちのチームもやるべき仕事をやったが、私にコントロールできるのはそれしかなかった。ガラス張りのオフィスの中にいるパートナーたちを見て、その身ぶりから必死に話の内容を読みとろうとした。彼らが微笑んだり笑ったりしているのが見えると、胸の中でそっと感謝の祈りを捧げた。 結局、ゴールドマン・サックスはその激動の年を乗り越えた。だが、残念なことに、多くの同僚が去ることになった。秋になると、私を含むマネージャーたちがマイクのオフィスに呼ばれた。私たちは楕円形をしたクルミ材のテーブルの周りに座り、息を詰めてマイクを見た。
はじまった「レイオフ」
「コストの削減が必要だ」彼が言った。「よって、これから第1回のレイオフを行う」 紙が1枚ずつ配られた。私たちの部署にいる200人の中から20人がリストアップされていて、それぞれの給料、直近の評価スコアが記入されている。「業績の悪い社員のリストだ」マイクが言った。「この中からまずは4人選ぶ」 マーチ・マッドネス【訳注:全米大学体育協会が主催する男子バスケットボールのトーナメント】の対戦のように、彼らはひとりひとり比較検討され分析される。ただし最後の4人に選ばれたとしても、全米チャンピオンになれるわけではない。解雇されるだけだ。初めに議論の対象になったのはカイルだ。図らずも、このフロアにいる数少ない黒人のひとりだった。 「彼には手出しできない」マイクが肩をすくめた。「“ステータス”があるからな」彼が指を引用符の形にしながら言った。 「あいつはオレオ【訳注:白人のような振る舞いをする黒人を揶揄する俗語】ですしね」ヘッジファンド・チームのマネージャー、ジャックが言うと、笑い声があがった。