またも超えられなかった青森山田の壁。ただ今までと違う手応えも。矢板中央は敗戦を無駄にせず、冬のリベンジを狙いに行く【総体】
中盤を厚くするため初めて3バックにトライ
[インハイ3回戦]青森山田 0(5PK4)0 矢板中央/7月30日/JヴィレッジP2 【画像】堀北・ガッキー・広瀬姉妹!初代から最新19代目の藤﨑ゆみあまで選手権「歴代応援マネージャー」を一挙公開! 矢板中央高にとって、青森山田高は超えなくてはならない壁だ。 2018年度の選手権準々決勝で対戦した際は1-2、2020年度の選手権準々決勝で対戦した際は0-5で敗れている。 ただ、選手たちは“対・青森山田”をイメージしつつも、日本一にたどり着くためには、プリンスリーグ関東1部の矢板中央より格上であり、青森山田と同じプレミアリーグクラスのチームを必ずどこかで倒さなければいけないと意識してきた。 「インターハイを通して、(どこかで)プレミア勢とやるのは分かっていた。そこでも勝たないと日本一は目ざせない。自分たちは常にピリつかせる雰囲気を作って、練習から相手の強みであるセットプレー、空中戦の全てで、青森山田といいますか、プレミアの基準でやってきた」。そう話すのはDF佐藤快風(3年)だ。 取り組みの成果はピッチ上で着実に表われた。インターハイ3回戦の青森山田戦、キックオフと同時に、リスタートを含めた相手のパワフルな攻撃を受ける時間は長かったが、佐藤を中心と3バックがしっかりはじき返していく。 ゴール前にボールがこぼれても身体を張り続ける。「ペナルティエリアでの守りは矢板中央として当たり前のこと。この試合では1失点も許されない。伝統的な赤い壁があって、矢板中央は1失点も許されない。身体を張っても、血が出ても、何が何でもやるしかない」(佐藤)。 チーム全体で守備の意思統一もされており、本来はアタッカーながらもボランチとしてプレーしたMF外山瑛人(3年)も「自分たちは3バックでやっているので、相手の厚みがかかった時にディフェンスラインだけでは対応できない。なので、縦の動きは意識していました」と最終ラインに加わり、相手を挟み込んで奪っていく。 これまではそうした“我慢の戦い”で青森山田と渡り合ってきたが、今年は違う色も見せることができた。「やっぱり得点をしていかないと勝てない」と口にするのは高橋健二監督で、今年は中盤を厚くするため初めて3バックにトライしてきた。 「相手はやっぱり空中が強い。だけど、今年のうちは空中だけではなく、足もとができるという強みもある。矢板中央は空だけでなく、地面に(ボールが)付いてパスを繋げる、ドリブルができる、1対1でかわせて勝てる。そういう選手がどんどん増えている」 佐藤の言葉通り、ロングボールによるカウンターではなく、後半は縦に繋いでシュートまで持ち込む場面が増加。終わってみれば矢板中央のシュート本数が5本、青森山田の3本と見せ場の数で相手を上回ることができたが、青森山田の壁は崩せない。 0-0で迎えたPK戦では、4番手まできっちり成功させたが、5番手のキックが相手GKに防がれ、今回のチャレンジも黒星で終わった。 今までとは違い、相手をあと一歩のところまで追い込んだ手応えを感じながらも、そのあと一歩の難しさや違いも感じている。 「青森山田はやっぱり色んな体験をして、経験を得ているチーム。会場の雰囲気の飲み込み方や試合前の入り方がやっぱり自分たちはまだ甘かった。私生活のところでもやっぱりまだ甘いところがあったのかなと思います」(外山) 「冬に再挑戦ではなくリセットで、もう切り替えるしかない。涙を流すとか、試合の反省をするのではなく、次に何ができるか。矢板中央としてさらに進化しないと、このままでは日本一を取れない。切り替えて前を向くしかない」。佐藤が話す通り、矢板中央は敗戦を無駄にはせず、冬のリベンジを狙いに行く。 取材・文●森田将義
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