バリュー株の曲がり角、株主還元策で二極化鮮明-決算機に選別加速か
(ブルームバーグ): 東京証券取引所が上場企業に要請した「資本コストや株価を意識した経営」に対する取り組み姿勢の違いで、株価パフォーマンスの明暗が分かれ始めている。
今月から本格化する通期決算の発表では、東証の要請に対する企業側の回答が相次ぐと市場関係者の間では予想されており、さらに株価の優勝劣敗が進む可能性がある。特に、株主還元策の拡大期待でこれまで買われてきたバリュー(割安)株は、堅調な値動きを継続できるかどうかの分岐点となりそうだ。
大手商社の伊藤忠商事は3日に2024年度の経営計画を発表し、純利益8800億円、自社株買いや総還元性向50%めどへの引き上げなどの方針を示した。投資家はこれを好感し、急騰した同社株は過去最高値を更新した。
伊藤忠は今年度に自己株取得約1500億円、純利益8800億円目指す
対照的なのが首都圏私鉄の東急だ。3月25日に向こう3年間の中期経営計画を公表したが、資産売却や株主還元が物足りないとの評価を受けて株価は急落。年初から上げてきた分の7割以上を失った。
東急株が急落、中計ネガティブとの声-営業利益が市場予想下回る
小売り業界では、滋賀県を中心としたスーパーチェーンの平和堂が中計の発表を受けて大幅高となったのに対して、カジュアル衣料品チェーンのしまむらは下落するなど、投資家の評価に大きな差が出ている。
ゴールドマン・サックス証券は、日本銀行の政策変更というマクロ面の大きなイベントを通過した上、4月から5月にかけての通期決算の発表、6月の株主総会シーズンを控えており、「市場の関心はマクロからミクロへとシフトする」と予想した。
同証の建部和礼ストラテジストによると、日本株の個別銘柄の値動きの相関は少なくとも2016年以降で最低水準にまで低下しているという。同時に、個別銘柄間のリターン格差は21年初め以来の高水準に上昇しており、銘柄選択次第で投資リターンが大きく変わってくる状況にある。