日本製鉄が大詰めで勝負、「USスチールの生産縮小時には米国に拒否権」
日本製鉄が米国の産業化の象徴であるUSスチール買収に向け勝負に出た。USスチール買収が実現すれば生産能力を今後10年間維持し、生産を縮小する可能性がある場合には米国政府に拒否権を与えると提案したのだ。 ワシントン・ポストと日本経済新聞によると、日本製鉄は先月30日、ホワイトハウスにUSスチール買収にともなう生産計画と拒否権行使の内容を盛り込んだ提案を伝えた。日本製鉄のUSスチール買収が国家安全保障問題に該当するかを審査してきた米財務省傘下の対米外国投資委員会は昨年12月23日に結論を出せないままバイデン米大統領に最終判断を通知した状態だ。バイデン大統領が直接買収の可否を判断しろという趣旨で、期間は7日までだ。 日本製鉄が生産維持を約束したのはペンシルベニアとインディアナ、アラバマなどにあるUSスチール所有の製鉄所だ。すでに稼動が中断されたイリノイ州グラニットシティにある製鉄所についても2年間の生産能力維持を約束した。日本製鉄としては追加投資など資金が必要とされる部分だが米国内の鉄鋼生産減少が国家安全保障を脅かすという懸念を受けた苦肉の策だ。買収後に生産能力を減らす場合には米国政府に拒否権を行使するようにしたのもやはり同様だ。米政府に拒否権を付与することにより「投資と雇用を維持する」という意志を伝えた。日本製鉄のこうした破格の提案が伝えられてニューヨーク市場ではUSスチールの株価が取引時間中に一時14%上昇した。 日本製鉄が提示した買収価格は149億ドル(約2兆3486億円)規模で、世界24位のUSスチール買収が実現すれば日本製鉄は世界3位に1段階上昇することになる。買収成功に向け当初昨年末までとなっていた買収完了目標を今年3月に変更した。 日本製鉄の攻勢に一部ではバイデン大統領が米国の労働者に対する雇用維持のような追加条件を提示する形で買収を認めるという見通しも慎重に出ている。買収反対の立場を表明してきたバイデン大統領が次期政権に最終判断を持ち越すとの見方も出ている。ワシントン・ポストは米当局者と業界関係者の話として、バイデン大統領が20日に発足するトランプ政権に判断を委ねるかもしれないと伝えた。トランプ氏は大統領選挙時にUSスチール売却に強い反対の立場を見せており、日本製鉄としては容易ではない局面を迎えることになりかねない。