ダルに対する米メディアの評価は「日米通算200勝」より「37歳以上で25イニング連続無失点」【メジャーリーグ通信】
【メジャーリーグ通信】 パドレスのダルビッシュ有が日米通算200勝を達成したと、日本のメディアが大々的に報じている。米国の主要スポーツメディアでも、NPB、MLBで合わせて200勝したことを報じてはいるが2番手扱いで、どのメディアも「4試合連続無失点」の方に大きな比重を置いている。 【確認する】大谷が購入した12億円超の超絶豪華すぎる大豪邸、実際の写真! 米最大のスポーツ専門局ESPNは「パドレスのダルビッシュ。スコアレスイニングを25に伸ばし、200勝目もゲット」との見出しでブレーブス戦の好投を報じた。日米通算200勝の方は、それを達成したのは野茂英雄、黒田博樹に次いで3人目であること、ダルビッシュ本人のコメント、パドレスのシルト監督の型通りの賛辞を交えて手短に掲載しているだけ。25イニング連続無失点の方は「年齢が37歳以上の投手で25イニング連続無失点をやってのけたケースは2015年のバートロ・コローン以来の快挙」「パドレスでは1980年にランディ・ジョーンズが達成して以来の記録」と過去の偉大な投手名を出して、この記録の価値の大きさを示そうとしている。 日本人選手の日米通算記録が、日本で熱狂的に報じられたのは16年にイチローが日米通算でピート・ローズの世界記録(4256本)を追い抜いた時だ。この時、米メディアの中にはピート・ローズの「(日本のメディアは)俺をヒットのキングからクイーンにしようとしている。次は高校での安打数も加えるんじゃねえか」というコメントを掲載して日米通算記録の意味のなさを皮肉っぽく報じるところもあったが、今回はそんな記事は一つも見られなかった。 これは米国でも日本のプロ野球への理解が進んで、日本では「名球会」という大選手が集う組織があって、入会資格が通算勝利数200か、通算安打数2000などに設定されていること。そのため日本のメディアが、米国では重視されなくなった投手の勝利数と打者の安打数をことさら偏重するのが広く知られるようになったことが大きい。 ちなみに、現在のMLBで重視されている先発投手の数字や指標は、WAR、防御率、FIP(被本塁打、与四死球、奪三振の3つを基に算出)、WHIP(1イニング当たりの「被安打+与四球」)、QS(先発6回以上を自責点3以内)の順であり、投手の勝利数はイニング数、奪三振率と同程度の、さほど重要ではないものと見なされている。そんな指標を基準に、レベルの違う日本と米国で出した数字を合計して、200勝だ、2000安打だと大騒ぎするのは、そろそろやめてもいいのではないだろうか。 (友成那智/スポーツライター)