理想はフロンターレ流、大木流、サッリ流のブレンド? J3で異彩を放つ寺田周平監督率いる福島の現在地【インタビュー2】
感銘を受けた大木監督の甲府
では、寺田監督として目指すべきサッカーはどんなものなのか。インスピレーションを受けたチームがあるという。 「フロンターレっぽいってよく言ってもらえるんですが、学んだところを取り入れさせてもらいながら、フロンターレをすべて真似るつもりもないんです。僕個人とし一番影響を受けたのは、2006年に対戦した時の甲府でした。当時の大木(武)さんの甲府はものすごく刺激的で、あの時から自分がもし監督になったら、こんなサッカーをしたいなって夢見ていました。だからS級の研修も当時、大木さんが指導されていた岐阜へ行かせていただいたんです。 その後の風間(八宏)さんのフロンターレ、オニさんのフロンターレからも多くを学ばせてもらいましたし、あとは2016年、2017年くらいのサッリが率いていたナポリ。当時のナポリのサッカーはめちゃくちゃ面白かった。基本的にサッカーを見るのは好きなんですが、次の試合も早く見たいと思える魅力があのナポリにはありました。だからシーズンの最初にも『こういうサッカーがしたい』と、選手たちにナポリの映像を見せたんです。 あの時のナポリは、常にゴールに向かう、最短距離でゴールに向かうっていう部分が魅力で、それを意識したボールの動かし方をしていた。あとはやっぱり技術ですよね。日本のチームが海外のチームに勝つためには、今フィジカルっていう部分も注目されていますが、勝らなきゃいけないのはやっぱり技術のところだと僕は考えています。そこで上回っていかないと、絶対勝てないんだろうなと」 大木監督、風間監督、鬼木監督、サッリ監督、彼らが作り上げたチームに共通するのは、ボールを大事にし、異彩を放ち、魅せる勝ち方を目指していた点だ。DF出身者の指導者はより手堅いチームを作る印象もあるが、4-3-3をメインシステムにする寺田監督は改めて異なるようだ。 「だってそっちのほうが面白いじゃないですか。やっぱり点が入ったほうが観ている人たちは面白いはずですし、絶対そっちのほうが盛り上がる。 当然、守備も大事で、0-0で最後1点を取って勝つ形も痺れるし、サッカーの魅力だと思います。そこを楽しむ方もいるはずです。だけど自分はやっぱり点を取って勝つやり方をベースにしたい。そもそも点を取らないとサッカーは勝てないですからね」 そのなかで福島では改めて技術の重要性も説いている。 「もちろんこだわっていますよ。1本のパス、ひとつのトラップを意識する。チームとしてまだまだですが、でも『ここでこう止めることができたら、こういうプレーができるよね』っていうのも映像で見せていますし、そうすると選手はちゃんと理解してくれて、トライしてくれる。その点ではもっと良くなるはずですし、すごい楽しみです」 今季の24試合を終えて、福島は10勝3分11敗の10位だが、得点数はリーグ5位タイの36(失点数は27)。昨季のチームのトータルゴール数が37だったことを考えれば(昨季の同時期の成績は8勝6分10敗、21得点・27失点の14位)、大きな進歩と言えそうだ。 まだ粗削りな面も多く、成績も安定しない部分もあるが、寺田監督が理想とするスタイルへ少しずつ近づいているのだろう。 ■プロフィール 寺田周平 てらだ・しゅうへい/1975年6月23日、神奈川県生まれ。東海大を経て、川崎一筋でCBとしてプレーし、日本代表にも選出。引退後は川崎でアカデミーの指導などを務めながら、2020年からはトップチームのコーチとして鬼木達監督を支えた。今季から監督初挑戦として福島の指揮官に就任。 取材・文●本田健介(サッカダイジェスト編集部)
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