総工費1000億円。まさに“ひとつの街”の中核をなすJ2長崎新スタジアムの全貌が明らかに! 日本初が目白押し、プールからも試合観戦が可能
立派な“衣装”に見合った“中身”を手に入れられるか
他にもピーススタジアムには“日本初”が目白押しだ。スタジアム内で醸造されたクラフトビールを提供するブルワリーレストラン「THE STADIUM BREWS NAGASAKI」、オフィス棟の屋上と商業棟の屋上を結び、スタジアム上空を滑走するジップライン、ピッチを使った夜のレーザーショーなど、「サッカースタジアムとはこうあるべき」といった従来の概念を打ち破るような取り組みは数知れない。 岩下社長は改めてこう強調する。 「プロスポーツですからもちろん勝った、負けたは大事ですが、ここにはそれだけではない楽しみが詰まっています」 Jリーグの試合がない日はチケットゲートがなくなり、市民が自由に客席に座って公園のように楽しめるのも、ピーススタジアムならではの売りだ。ただし、民設民営の事業だけに、採算を度外視にはできない。岩下社長も「まずは試合やイベントが満員のお客さんで埋まること。その結果として25~30年で投資を回収できれば」と語る。 「地域創生のロールモデルにしたい」(岩下社長)のであればなおさら、やはりスポーツ面での成功が必須。サッカーで言えば、V・ファーレンが強くなくてはならない。 10月14日の開業を前に、ピーススタジアムのこけら落としが10月6日に行なわれる。J2リーグ第34節、大分トリニータ戦。V・ファーレンが新スタジアムでの初戦を迎える。「長崎スタジアムシティ」としての船出を飾る意味でも、現在昇格プレーオフ圏内の3位につけるチームのシーズン最終盤を占ううえでも、絶対に負けられない一戦だ。 「作ったら終わりではないんです。(新しいスタジアムでの)最初の試合だから、という言い訳は、事業面でもスポーツ面でも許されません。ファン・サポーターが安全に楽しんでいただける運営をしなくてはならないし、昇格争いをしているチームはしっかりと勝利を届けなくてはならない。これまで以上に意識を高く持って、クラブ全体として初戦からアクセルを踏み込んで行かなくてはなりません」 高木取締役兼CEOの言葉からも、強い覚悟が滲み出る。ただその一方で、新スタジアムがきっとチームの背中を押してくれるという確信もある。 「この距離で見られていれば、選手たちの集中力は研ぎ澄まされるはずですし、スーパープレーが生まれる予感はありますね。プレーヤー目線に立つとゴールまでの距離も近く感じられるので、シュートシーンも増えるでしょう。声援に後押しされて、アグレッシブなプレーを見せてくれると思っています」 たしかに、昇格争い真っ只中の微妙なタイミングでの本拠地変更で、今までにないスタンドとの一体感が逆にプレッシャーにもなりかねないだろう。それでもV・ファーレンは、J1昇格という夢を掴み取らなくてはならない。 たくさんの日本初が詰まった立派な“衣装”に見合った“中身”を手に入れられるか。長崎の地域創生を掲げたこのビッグプロジェクトの成否を最後に左右するのは、ピッチ上の選手たちだ。 取材・文・写真●吉田治良
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