“耐震補強”した自宅「これからという時に…」車を乗り捨て津波から逃れても感じる不安
去年5月の地震に続き大きな被害に見舞われた石川県珠洲市正院町は、未だ電気が通っておらず、夜になると辺りは真っ暗です。数メートル先もほとんどなにがあるか分からないような暗さです。ただ、上を見上げると満天の星空が広がっています。発災から10日目となり、午前中は少し弱い雨が降っていました。ただ、午後からは晴れてきました。しかしながら、夜になるとぐっと冷え込んで厳しい寒さとなっています。このあたりというのは、全壊,半壊の建物が並んでいます。 【画像】一気に遡上する津波を撮影した濱塚さん 正院町は、去年5月に震度6強を観測した地震でも、最も深刻な被害を受けた地区の一つです。ただ、今回の地震では、地震の揺れだけではなく、津波がこの地域を襲いました。実際に津波に遭遇した正院町の男性に話を聞きました。 ■乗っていた車を乗り捨てて…押し寄せる津波 タクシー運転手の濱塚喜久男さん。乗客を乗せ、海岸沿いを走っていた時に地震が発生。その直後、自分のすぐそばに津波が迫る様子を目の当たりにしました。 濱塚さん「珠洲市宝立町まで来たら津波が川からババーと来て」 石橋弘崇アナウンサー「すごいスピードで遡上していますね」 濱塚さん「動画を撮るのやめて、すぐ上にあがりました」 乗客とともに、慌てて高台へ避難した濱塚さん。濱塚さんが乗り捨てたタクシーは瞬く間に津波にのみ込まれ、瓦礫とともにおよそ200メートル先まで流されました。浜塚さんは「怖くて振り向く余裕などなかった」と話します。 MRO北陸放送のスタッフは去年の地震の直後にもこの濱塚さんを取材していました。濱塚さんは当時、避難所から県営住宅への入居が決まっていましたが、被災した家を直すか、取り壊すか、悩んでいました。 当時の濱塚さん「元の生活になるにはもうちょっとかかるね…(元の家を)あのまんま直して過ごしたいんですけどね」 改めて取材した濱塚喜久男さんに話を伺います。 ■耐震補強した2か月後に再び被災…濱塚さんの想い 濱塚さんの自宅は、一階の屋根の部分は、大人の腰あたりまで落ちてきています。一階部分はぺちゃんこにつぶれてしまっています。この住宅は、去年の地震後に耐震補強の修理をして11月に住み始めたばかりでした。 濱塚さん「さぁ、これから、という時に…がっかりしましたね」 地震が発生した1日は、翌日に津幡町にいるご家族が集まる予定だったんでした。
濱塚さん「1日が仕事だったので2日に来いと言っていた。もし1日に来ていたら、たぶん人的被害が出ていたかもわからないですけども…来なくて助かりました」 生まれてからずっと珠洲市で暮らしてきた濱塚さんですが語るのは、今後への不安です。 濱塚さん「先が見えないんですよね。先が見えないから、何も考えられない。ここに住んでいても、こういう地震が続いたらもう住めないですよね」 住民らは、ここに住み続けるのか、離れるべきなのか複雑な思いで暮らしています。
北陸放送