「貯蓄に余裕があるから」と両親が年金の受け取りを70歳に繰下げするようです。もしものことを考えると、損をしないか心配です…
受け取れる年金額を増やしたり貯金に余裕があったりといった理由で、年金の受給時期を遅くするケースがあります。繰下げ受給と呼ばれ、遅くした月数に応じて受け取れる金額も増える制度です。 しかし、繰下げ受給をすると親が受取総額で損をするのではと不安を覚える子どももいるでしょう。今回は、繰下げ受給の概要と何歳までに受け取ったら得なのかなどについてご紹介します。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
繰下げ受給とは?
年金の繰下げ受給とは、本来受給開始する年齢である65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で、繰り下げて年金を受け取れるようにする制度です。 繰下げ受給を利用すると、繰り下げた月数によって0.7%ずつ受け取れる年金額が増加していきます。例えば、年金受給額が年間150万円の方が70歳まで繰り下げると42%増加し、213万円を受給可能です。 日本年金機構によれば、繰下げ受給を利用するためには、66歳以降で年金を受け取りたい時期に「繰下げ請求書」を年金事務所または年金相談センターへ提出する必要があります。 年金の増加率は、手続きを行った時点で決定するため、申請時期には注意が必要です。もし、70歳まで待ってから受け取りたい場合でも、早めに提出すると70歳になる前の増加率で計算される可能性があります。 なお、65歳時点で受け取るはずだった年金額を、あとから請求することも可能です。ただし、日本年金機構によると、70歳を過ぎると申請から5年前の日時点で繰下げ受給をしたとして計算され、一括で年金が支給されます。 一度に過去の年金を受け取ると、税金や保険料などに影響するケースもあるため確認が必要です。自身に影響があるか分からない場合は、年金事務所に問い合わせておきましょう。
繰り下げしなかったときよりも受給総額が高くなるのはいつ?
繰下げ受給は、1年繰り下げるごとに受給額が8.4%ずつ増加していきます。最初は65歳から受け取っていた方のほうが受給総額は多くなりますが、最終的には繰下げ受給をした方のほうが受給総額は多くなるでしょう。 今回は、以下の条件で受給総額の変化を比較します。 ・65歳時点で老齢厚生年金は100万円、老齢基礎年金は50万円の合計150万円を受給できる ・65歳で退職しており、これ以上厚生年金の加入期間が増えることはない ・年金は老齢厚生年金・老齢基礎年金ともに繰下げ受給で70歳から受け取ることとする 条件を基にしたときにおける受給総額の変化は表1の通りです。