単身高齢者、不登校、ひきこもり… 孤独・孤立全県で防止 情報共有体制を今年度中に構築 福島県、市町村、関係機関
福島県は市町村、社会福祉協議会、各種NPO団体などの関係機関と連携し「孤独・孤立」の対策と支援に一体的に当たる体制を今年度中に構築する。高齢者の1人暮らしや不登校、ひきこもりなど孤独・孤立状態の県民が増えているためで、さまざまな機関がネットワークを築いて情報を共有すれば支援を必要としている人を迅速かつ多面的にケアできるようになる。全県挙げて誰一人取り残さない地域の実現を目指す。 連携体制のイメージは【図】の通り。孤独・孤立を虐待被害者や各種災害の被災者らも含めて広く捉え、支援に取り組む。対象となる人の状況に応じ福祉、医療、教育、心理など分野を超えて必要な手を迅速に差し伸べる。各団体が把握している事例の共有以外にも情報発信のための統一ウェブサイトの運営、講演会やセミナーの開催などを予定している。県は来年1月下旬にも発足させたい考えだ。 孤独・孤立状態の人は生活困窮や求職、障害など複数の困難を同時に抱えている事例が多い。従来の縦割りの枠組みでは担当部署が分かれていることなどを背景に多面的で円滑な支援に結び付かないことがあった。小規模な町村では担当職員の数が限られる上、対象者をケアできるNPOなどの民間組織が少ないなどの課題も指摘されている。連携体制が整えば最寄りの役場に相談すれば近隣市町村の民間組織を紹介してもらうことが可能となる。
孤独・孤立状態の人は今後ますます増えると予想されている。県社会福祉協議会が公表した東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う復興公営住宅(災害公営住宅)の実態調査によると、入居世帯のうち高齢者の1人暮らしまたは高齢者のみの複数人世帯は約5割を占めた。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来推計では2050年に県内の世帯総数に占める65歳以上の単身世帯の割合は2割を超える。 不登校やひきこもりも深刻だ。2023(令和5)年度の県内小中学校の不登校の児童生徒は4338人で過去最多を更新。ひきこもり、またはその疑いがある人は2022年度時点で県内に少なくとも1300人以上いるとされる。 郡山市でひきこもりの就労支援などに当たっている認定NPO法人キャリア・デザイナーズによると、不登校を経てニートとなり生きづらさを抱いていた人がNPOの活動に参加したことをきっかけに医師から発達障害と診断され、適切な支援が受けられるようになったという。鈴木隆将理事長は「ネットワークを構築するだけでなく、いかに実効性を担保していくかが鍵だ。多様な人や団体が関わる形を模索していく必要がある」と話している。