“切らない”乳がん治療「早期乳がん」に対して保険適用、14カ所で受け入れ開始
早期の乳がん患者に対して、胸に細い針のような電極を刺して熱でがんを焼いて死滅させる「ラジオ波焼灼療法(RFA)」が2023年12月に保険適用されました。 日本乳癌学会は、14カ所の実施・医師研修受け入れ施設を公表しています。こうした状況について、甲斐沼医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
ラジオ波焼灼療法(RFA)とは?
編集部: まず、今回のテーマとなっているラジオ波焼灼療法について教えてください。 甲斐沼先生: 経皮的ラジオ波焼灼療法は、2004年に肝がん治療で初めて保険適用された治療法です。これまでに多くの医療機関で使用されてきましたが、2022年に肺がん、腎がん、悪性骨軟部腫瘍、良性の類骨骨腫に対して適応が拡大されています。 そして2023年7月、早期の乳がんに対して適応拡大が薬事承認されました。 乳がんの治療は早期でも乳房の一部や全部を切除する手術が中心となっていますが、ラジオ波焼灼療法は傷が小さいため体への負担も少なく、これまでの臨床研究でも切除手術と同等の効果が認められました。 対象となるのは1つのがんだけで、がんの大きさが1.5cm以下などの条件に当てはまった早期の乳がんになります。ラジオ波焼灼療法は、日本乳癌学会が認定した14の医療機関でおこなわれます。
乳がんとは?
編集部: 今回の研究対象となった乳がんについて教えてください。 甲斐沼先生: 乳がんは乳腺に発生するがんで、女性がかかるがんの中で最も多いとされています。 日本人では40~50代女性の発症が多く、全体の半数近くが乳首を中心として外側の上部分にできるという調査結果があります。がん細胞の広がり方によって、乳がんは「非浸潤がん」と「浸潤がん」に分類されます。 非浸潤がんは、母乳を作成して乳頭まで届ける小葉と乳管内にがんが留まっているものです。一方で浸潤がんは、乳管の外側に存在する基底膜を超えて、がん細胞が乳管の外の間質に広がっているものを指します。 間質には血管やリンパ管が存在するため、浸潤がんでは乳房を超えてほかの臓器にがん細胞が移動する可能性が出てきます。 非浸潤がんの段階で適切な治療を受ければ治ることが見込まれ、浸潤がんも浸潤が小さいうちに治療を受ければ、ほとんどの場合で治ることが期待されています。