【コラム】韓国、弾劾政局の外交空回りに警戒を
来年1月20日、ドナルド・トランプ米国次期大統領の就任を控えて韓国は弾劾政局を迎えることになった。韓悳洙(ハン・ドクス)首相が大統領権限代行として国政を指揮するが、大統領がいる時に比べて国政掌握力は落ちるよりほかない。事実上、首脳間の接触が重要な外交・安保分野で韓代行ができることは限界が多い。このような状況で同盟も取引の観点から見て関税戦争を予告したトランプ氏の就任は韓国に大きな挑戦だ。韓代行を中心に政府と国会が外交・安保政策基調を維持して外交空回りを最小化して状況をしっかりと管理することが最善だ。 まずわれわれの外交安保の根幹が韓米同盟であることを明確にしなければならない。今回の戒厳事態にも国民が相対的に安保不安をあまり感じなかったのは在韓米軍があったためだ。国民の多数は韓米同盟を支持している。トランプ第2期に入り、韓米同盟は新たな局面を迎えるかもしれない。トランプ氏は韓国の在韓米軍分担金を10倍引き上げるべきだと主張している。これを受け入れなければ在韓米軍を撤退または縮小すると威嚇している。一部専門家はトランプ氏の取引的志向を考慮してトランプ引継委員会に先制的に分担金を大幅に引き上げたり、米国産農産物・武器などの大量購入を提案しようと助言する。 これについて朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾政局で迎えたトランプ第1期スタート当時、駐米大使を務めた安豪栄(アン・ホヨン)元外交通商部次官は11日、韓半島(朝鮮半島)平和作り傘下の韓半島フォーラムで「われわれが先制的に度量の大きい提案をすればトランプ氏は『韓国はやはりマネーマシン(money machine)であるのは明らか』とし、さらに大きな対価を要求する可能性が高い」と指摘した。安氏は「トランプ第1期の時もトランプ氏は韓米FTAの廃止や鉄鋼・家電製品への関税賦課、在韓米軍分担金の大幅増額などを要求したが、交渉を通じてうまく処理した前歴があることから、トランプ第2期も韓国がしっかり管理すれば大きな問題はないだろう」と話した。 また、日本との協力を持続する必要がある。共に民主党は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府の韓日協力強化を対日屈辱外交だと批判している。しかし文在寅(ムン・ジェイン)政府の反日外交は韓米同盟に否定的影響を及ぼし、韓国の外交的立ち位置を狭めさせた。韓日協力は韓米同盟強化のためにも必要だ。日本は米国に強力なネットワークを構築していて米国は米日同盟を韓日同盟よりも重要に考えている。トランプ第2期に韓日が協力してトランプ政府に対応することが多い状況で日本を遠ざけるのは自分の首を絞める行為だ。 そうした点で民主党が7日に国会に提出した1次弾劾訴追案に入った文面(「いわゆる価値観外交という美名の下に北朝鮮と中国・ロシアを敵対視して、日本中心の奇異な外交政策に固執する」)は問題が多かった。米国のハリー・ハリス元駐韓大使はボイス・オブ・アメリカ(VOA)放送に「尹大統領の非常戒厳宣言と弾劾事態が韓国と日本との関係に短期的に否定的な影響を及ぼし、米国・韓国・日本の3国関係にも影響を及ぼすだろう」としながら「韓国は日本と強力かつ肯定的な関係を維持することの重要性を理解するよう望む」と述べた。 韓米同盟を重視するからと言って中国を排斥する必要はない。トランプ第2期は韓中関係に多くの難関が予想されるが、中国は依然として韓国最大の貿易相手国だ。中国との関係をうまく管理することは韓国の安保と経済に不可欠だ。このような状況で尹大統領は12日、非常戒厳を釈明する談話で野党がスパイ罪改正を遮っているといいながら中国に言及し、「中国産太陽光施設が全国の森林を破壊するだろう」と主張した。これに対して中国の毛寧外交部報道官は「中国スパイという汚名を作り出して、正常な経済貿易協力を中傷することに断固として反対する」と反発した。いくら戒厳に対する釈明で焦りがあったと言っても、言及してはいけない内容だった。 北朝鮮関係では慎重さが必要だ。尹政府は核・ミサイルで挑発する北朝鮮と強対強の対峙を継続した。国民の不安は加重された。韓代行体制で北朝鮮との緊張を高めるような北朝鮮に対するビラ散布や拡声器放送は中断するのが望ましい。北朝鮮を変化させようとする歴代政権の計画は失敗した。統一は遠い未来の目標に置き、北朝鮮との平和共存を模索する時だ。西ドイツは東ドイツとの平和共存を推進する過程で統一を成し遂げた。今後、金正恩(キム・ジョンウン)政権を清算対象ではなく対話相手と認めた状態で、南北を「平和的2国家関係」として確立する方向に進んでいかなくてはならない。韓代行体制が外交・安全保障懸案をしっかり管理して弾劾政局にも韓国が正常に運営されていることを国際社会が認識できるようにしなければならない。 チョン・ジェホン/国際外交安保エディター