安全保障政策をめぐって亀裂を深める新聞 ~「読売、産経、日経新聞」対「朝日、毎日、東京新聞」
読売が諸手をあげて歓迎、朝日が強く反対
オーストラリアのアボット首相は9月14日、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」への攻撃に備え、600人規模の部隊や戦闘機を中東に派遣すると発表した。これは米国からの要請をうけたものだ。 この発表からまもない18日、豪州の連邦警察はシドニーで「イスラム国」の支援者らの関係先を家宅捜索し、無差別テロを計画した容疑で15人の身柄を拘束した。読売新聞などの報道によると、「無差別に市民を捕まえて首を切断し、その映像をイスラム国を通じて公開する計画だった」(9月19日朝刊)という。 これは豪州が自軍の中東への派遣を決めたことで、「イスラム国」は同国を敵と認定、間髪をいれずに無差別テロによる報復を計画したことになる。日本が集団的自衛権の行使のための関連法案を整備し、米国の求めに応じて同じように自衛隊を中東に派遣することになった場合、同じことがおこる可能性がきわめて高い。 豪州の治安当局はテロを未然に防いだが、経験が浅い日本の警察に対応できるのであろうか。日本列島には約50基の無防備な原発も点々とある。政府は来年の通常国会で自衛隊法などの関連法の改正をすすめ、集団的自衛権による派兵をできるように法整備する方針だ。 それでは、この集団的自衛権の行使容認をめぐって在京紙はどのようなスタンスで報道しているのであろうか。安倍晋三内閣は7月1日、憲法9条の解釈を見直して集団的自衛権の行使を認める閣議決定をおこなった。このときの在京紙の社説(7月2日朝刊)をみてみよう。 「読売、産経、日経新聞」が賛成、「朝日、毎日、東京新聞」が反対の立場から論じた。たとえば、読売は「抑止力向上への意義深い『容認』」と題し、「米国など国際社会との連携を強化し、日本の平和と安全をより確かなものにするうえで、歴史的な意義があろう」と諸手をあげて歓迎した。一方、朝日は「この暴挙を超えて」とし、「自衛隊員を海外の、殺し、殺されるという状況に送り込む覚悟が政治家にも国民にもできているとはいいがたい」と強く反対した。 このように国の根幹をなす安全保障政策においても、報道の二極化がくっきりとみられる。