7組のカップルが誕生!東京初進出の「韓国男性×日本女性」お見合いパーティに潜入してみた!
韓国南東部の大邱に住む知人から「東京で“日韓”お見合いパーティーをやるから取材に来ないか」と連絡があった。 【画像】なんだかすごい…日本人女性ゲットに真剣な韓国人男性が叩く和太鼓の響き これまでにも何度か韓国や大阪で開催したのは知っていたが、東京では初開催だという。韓国でも日本と同じように晩婚化や少子化が社会問題となり、自治体まで婚活の支援に乗り出す時代だという。しかも、日本在住の韓国人男性ではなく「日本人女性との結婚を真剣に考え、韓国からわざわざやってくる」というではないか。国を超えたお見合いの現場を見られる機会はなかなかないと思って取材に駆け付けた。そこで見えてきた日韓の男女の心境とは――。 ◆起立、拍手で迎える韓国の男性陣が日本語で自己アピール 6月下旬、東京・上野。夕暮れ前のパーティー会場ではスーツ姿の男性14人が緊張した面持ちで円卓に座っていた。蝶ネクタイ姿の人もいる。全員、韓国から日本の女性との出会いを求めてやってきた。司会役の韓国側主催者の男性が軽妙なトークで緊張をほぐす。事前の資料には30~40代で薬剤師や大手企業社員、公務員、実業家、平均身長175㎝、年収5000万ウォン(約570万円)以上と書かれている。 いよいよ女性陣の入場だ。ドアが開き、男性らは一斉に立ち上がって拍手で出迎えた。「ようこそ! 歓迎します」と韓国語のアナウンスが会場に響き、女性たちが男性陣の間に着席した。双方、相手の言語が話せない人も多く、通訳が間に入る。最初はアイスブレーキング(空気をやわらげ、緊張をほぐす)目的のゲームが続いた。卓球のボールを連係プレーで運んでいくゲームが意外に盛り上がって笑顔がこぼれる。雰囲気は悪くなさそうだ。 男性側の自己紹介のコーナーではスクリーンに「動物病院を運営している獣医です」「飲酒や外食よりも家族と一緒に過ごす時間が好きです」とセールス文句が並ぶ。一生懸命に覚えてきた日本語を披露する男性、主催者が「エース」と呼ぶイケメン。熱心にメモを取りながら耳を傾ける女性の姿も見られた。男性らは大部分が地方都市出身で、概して礼儀正しく、誠実そうな印象だ。 その一人、大邱在住の自営業者の男性(43)に話を聞いてみると「昔から日本の漫画やアニメが好きなので、漫画を見ながら日本語を勉強しました」と流ちょうな日本語で答えてくれた。特に『ドラゴンボール』が好きだという。「大人数でのお見合いは初めてです。一度は参加したいと思って」。日本の女性の魅力を尋ねると「女性らしさ。やっぱり韓国の女性はちょっと厳しい。日本の女性との出会いを求めて東京まで来ました」と意気込んだ。 日韓関係は浮き沈みを続けてきたが、この男性は「それは全然関係なく、ニュースだけの話。普通の韓国人は日本人が好きです。特に韓国の男性は日本人女性に良いイメージを持っている。日韓カップルが投稿する動画を見て『自分も日本の女性と結婚したい』と夢見る人は私も含めて多いです」と言う。日本女性は「家事や料理、子育て」をしっかりこなし、女性らしいという印象が強いようだ。 もう1人、韓国北西部の華城から参加した別の男性(39)にも聞いてみた。 「私には韓国の女性より日本の女性のほうが性格や雰囲気が合う。大邱で初めて参加して以降、日韓結婚に関心を持つようになって、以後ずっと参加しています」 今回で4回目の参加だという。 「今回は結婚情報会社を通じて結婚を真面目に考えている女性が来ると聞き、期待しています。日本の女性は男性に配慮してくれる。韓国ではいくつもの条件をほとんどすべて満たさないと結婚に至らないことが多いです。お金、外見、身長、夫の両親…。だから結婚に後ろ向きだったが、日本の女性と交際して感じたのは、いくつかの条件のうち一つでもインパクトを与えられれば好感を持ってくれるということでした」 一方、初参加という日本側の会社員女性(35)は「韓国語が話せないので不安だったのですが、通訳さんがサポートしてくれて楽しい時間になりました。もともとK-POPとか韓国ドラマをよく見るので韓国には興味があったけど、男性に出会う機会はなくて。誘ってもらって参加しようと思いました」と話した。言葉の壁はあっても「私も学びたいって思いますし、お互い学びたいっていう気持ちがあればコミュニケーションは取れると思います。(日韓関係についても)全く気にならないです。私はすごく好きなので」ときっぱり話した。 パーティーでは、食事しながら男性が定期的にテーブルを回り、趣味や出身地などを話題に歓談を続けた。「スキューバダイビングが趣味です」「私は泳げないんです」「僕も始める前は泳げなかったんですよ」。そんな和やかな会話が続き、この日のフィナーレは第1次の希望調査。 男女それぞれが第2希望まで書き込み、提出した。2日目は横浜へバスで移動し、ラーメンの麺作り体験や和太鼓演奏などのプログラムを一緒にこなしながら交流を深めた。最終的に、男女14人ずつの参加者の中から7組のカップルが誕生。日韓恋愛がスタートした。 パーティーを主催したPANADAの李昊相(イ・ホサン)代表(51)が語る。 「最近はマッチングアプリなどもありますが(対面と比べると)真面目さに欠けると感じる。軽く会う感じで、問題も起きます。むしろ昔の方式(対面)でやるほうがベターだと考える人たちが増えていて、私の立場では(事業拡大の)可能性が非常に高まっています。 でも、私の事業が拡大することも大事ですが、心から思うのは参加してくれる男女の人生が好転すればいいなということです。みなさんがうまくいってこそ私もやりがいを感じます。その結果として日韓関係が良くなればいいなと思います」 日韓は歴史問題などで関係悪化と好転を繰り返してきたが、李さんの父親は日本を経済発展のロールモデルとして考えていたといい、李さんも日本には好意を抱いている。 日本側で準備に奔走したPANADAの中村佳奈さんにも話を聞いた。 「一対一のお見合いだと、かしこまった感じになってしまうけれど、イベントならお祭りのようなもので参加しやすくハードルを下げて女性を呼べる。男性にとっても気軽に参加できるんじゃないかと思います。全ての方がマッチングするわけではありませんが、韓国の男性が一度にこれだけの日本人女性と話す機会はないだろうし、女性側にとってもそうです。こういう場でどんどん慣れていけば、真剣な一対一のお見合いにつながる“とっかかり”にもなり得ると思います」 今年3月に韓国統計庁が「’23年婚姻・離婚統計」を発表した際は、「韓国人男性と日本人女性の婚姻件数が急増した」と韓国メディアの注目を集めた。昨年の韓国男性と日本女性の婚姻件数は840件で前年比約40%増となったというわけだ。もっとも過去には1300件を超えた年もあったのだが、’18年から4年連続で減少していたのが久しぶりの増加に転じた。最多のベトナム女性(4923件)や中国女性(2668件)、タイ女性(2017件)とは一桁違うものの4位を占めた。 日本の厚生労働省の’21年の統計によれば、「妻日本・夫外国」のケースでは夫の国籍は「韓国・朝鮮」が最多だった。在日コリアンのケースも含まれるとみられるが、それでも「中国」の2倍近い。 この背景として、日韓カップルが幸せな日常を紹介するYouTube動画の流行があるという指摘は多い。交際中の日本人男性と韓国人女性の若者のチャンネル「TomoTomo」は105万人のチャンネル登録者を擁する。日韓夫婦の「クッキーカップル」は36万人が登録し、親同士の対面や「プロポーズ大作戦」などが人気コンテンツになっている。「国際恋愛や結婚はハードルが高そう」と思っていた日韓の男女にとっての心理的なハードルを下げる効果が出ているのかもしれない。 日韓カップルといえば筆者には忘れられない女性がいる。まだ日韓が国交正常化する前の1964年に文通で知り合った韓国の男性と結婚し、韓国に渡った横山景子さん(88)だ。半世紀以上、韓国の市民に生け花を教えてきた。結婚当時は韓国に対する「無意識の偏見」が強かったが、若い科学者だった夫の情熱に心を動かされて結婚した。両親は反対して結婚式に来てくれなかったという。「オンマ(お母さん)」「アボジ(お父さん)」くらいしか韓国語を知らず苦労した。反日感情が今より強かった夫の国・韓国へ単身で移住し、現地に溶け込んで地元住民に愛された横山さんは夫への愛情が深く、夫の他界後、夫との思い出やエッセーの遺稿を盛り込んだ本を出版した。 翻って現在。日本女性の中には韓国人男性は優しく、まめに連絡をしてくれるし、ほどけた靴ひもを結んでくれる――といった好イメージを持つ人も少なくない。「韓国人男性は(徴兵制で)軍隊に行っているからか、女性は守るものという意識が強い。荷物は当然持ってくれるし、デートのお金も基本的には出す」との声もある。一方、韓国人男性と結婚して現地で暮らす50代の日本人女性は、夫は実家の家族に対する思いも強く「私とお義母さん、どっちが大事なの? みたいなシチュエーションが多々ありました」と振り返る。 「例えば日本から持ってきた真珠のネックレス。私は大事にしたくてつけていなかったのに『あんまりつけないから』と勝手にお義母さんにプレゼントしていたことがありました。怒りが爆発して取り返しましたけど。今となっては笑い話ですが、当時は深刻に悩みました」 この女性によると、子供たちが小学校で歴史を学び始めると”過去に酷いことをした日本人”として、いじめられることもあったという。 「日本で愛された経験があれば、『私の知っている日本はそんな国じゃない』としっかりしたアイデンティティーが育つのかなと思って日本の小学校に短期留学に送り、優しい日本のお友達との友情で危機を乗り越えました」 韓国人男性と交際して苦い経験をした女性は他にもいる。40代の日本人女性はこう振り返った。 「最初は情熱的で記念日を大切にしてくれた。向こうも好かれたいという気持ちがあったから大事にしてくれたけれど、日本の女性は韓国女性ほど厳しくないから、それに慣れてしまうのか、記念日を大切にしなくなった。電話も最初は向こうからかかってきたけど、こっちからするようになった。釣った魚にエサはやらないという感じだった。ほかにも相手の男性は良くても、ご両親は(対日感情は)大丈夫なのかも気になった」 バラ色ばかりとは言えない日韓恋愛。結局相手の誠実さ、本気度を見極めることが肝要という点では相手が日本人でも韓国人でも変わりないと言えそうだ。 撮影・文:小野原遼成 おのはら・りょうせい/1979年生まれ。英国と米東部への留学経験がある。2000年の初の南北首脳会談と2002年の初の日朝首脳会談をきっかけに朝鮮半島に関心を持ち、韓国に渡って語学研修した後、現地で約6年間、ジャーナリストとして活動した。米国事情や国際情勢にも精通し、取材などで訪れた国は20カ国を超える。
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