米大統領選 消えなかった「トランプ旋風」 次の南部州制すれば本命候補?
米大統領選のニューハンプシャー州での予備選は、共和党がトランプ氏、民主党はサンダース氏がそれぞれ勝利しました。初戦のアイオワ州党員集会を制したクルーズ氏(共和党)、僅差で勝利したクリントン氏(民主党)は敗れました。この結果をどうみるか。今後の展望と合わせて、アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏に寄稿してもらいました。 【図】アイオワ大接戦で注目 米大統領選の「党員集会」と「予備選挙」って?
民主党は注目度増すサンダース氏の大勝
今回のニューハンプシャー州の予備選の結果だが、民主党のサンダース氏、共和党のトランプ氏の勝利そのものは事前の世論調査でも予想されており、大きな驚きはない。 ニューハンプシャー州はサンダース氏の地元であるバーモント州と隣接しており、白人有権者が9割以上を占める。黒人やヒスパニックなどマイノリティにとりわけ強いクリントン氏の勝ち目は薄かった。逆に、サンダース氏にしてみれば「絶対に落とせない州」であり、クリントン陣営の3倍近い資金をテレビ広告に投入するなど大一番と踏んでいた。 それゆえ、私自身の関心はむしろサンダース氏の「勝ち方」で、票差が10%以内なら実質的には「敗北」、20%以上なら「大勝」と考えていた。その意味では、22%の大差でクリントン氏を破ったのは大したものである。全米の注目度も増し、選挙資金も潤沢になるだろう。ただ、ここからは人種的により多様な州や資金力や組織力がものを言う面積や人口の多い州での戦いが始まる。サンダース氏がそうしたハードルをクリアできるほどの勢いをつけることができるか。私自身は懐疑的である。ただ、戦いを続け、有権者に支持を広げ、彼の主張をクリントン氏に少しでも飲ませる、つまり中道派のクリントン氏を「より左」に戻すという点では十分意義がある。 クリントン陣営にしてみれば、もともと形勢不利とされたアイオワ州とニューハンプシャー州での戦いを1勝1敗で終えたことは「御の字」と考えているだろう(夫のビル・クリントン元大統領は1992年に両州とも落としたが、結果的に、民主党の指名を獲得し、共和党との本戦も制している)。