釣り用ルアーのごみ化による海洋汚染…世界で対策強化、回収・再生の取り組みや製品素材の改良
海中に放置された釣り用ルアーなどの疑似餌が環境に与える影響に懸念が広がっている。プラスチックや鉛といった海洋汚染につながる素材が使われる製品が多いためだ。各地の釣り場で回収作業が行われているが、残されたままのものも多い。釣り具業界は、環境への負荷を低減した製品の開発に乗り出している。(井上絵莉子)
1時間で1700個
9月、アジの釣り場として人気の舞鶴親海公園(京都府舞鶴市)で、日本釣振興会主催の清掃活動が行われた。ダイバー17人が約1時間で、海底から回収したルアー類は約1700個。海底の石や藻に引っかかる「根掛かり」でたまったとみられる。護岸を管理する舞鶴市の担当者は「こんなに落ちているとは驚いたが、回収できていないルアーも多い」と話す。
「マダコ」の水揚げで有名な兵庫県明石市沖でも、ルアーは問題化している。たこ釣り用が普及した数年前から、たこつぼ漁のロープや底引き網に絡まる事案が目立ち始めた。漁に支障も出ており、市内の五つの漁業協同組合は2020年から、漁師らによる回収を促すため、1個50円で買い取りを行っている。
東二見漁協の福井基之参事は「毎年1万個前後を買い取っているが、きりがない」と嘆く。
世界的に対策強化
ルアーは、小魚などの餌に見せかけるため素材の加工性が重視されており、量産に向いているプラスチックや、加工がしやすい鉛が使われることが多い。鉛は有害性があり、自然界で分解されないプラスチックを巡っては、25日に、韓国・釜山で、海洋汚染などを防ぐための国際条約作りを担う政府間交渉委員会が始まるなど、世界的に対策が強化されている。
進む開発
業界団体によると、疑似餌は国内の釣り具市場の15%前後を占める主力製品だが、ごみとなるケースが多い。このため業界も環境への影響が少ない製品の開発に力を入れる。
注目を集めるのが、100円ショップ「ダイソー」を展開する大創産業(広島県東広島市)だ。コロナ禍の釣りブームを受け釣り具販売を強化しており、今年9月、植物由来の樹脂を使ったルアーを発売した。釣り具メーカー「ビッグオーシャン」(青森県)は鉛ではなく鉄を使ったルアーを07年から販売している。発売当初は苦戦したが、「よく釣れる」との評判が広がり、近年は、月5000~8000個が売れるヒット商品になったという。
九州大の清野聡子准教授(生態工学)は、「海洋ごみになると生態系への影響があるとされるルアーなどの釣り具には、『つくる責任、つかう責任』がある」と指摘する。