投票率“日本一”の離島、「政治とカネ」の問題どう響く 有権者からは怒りとあきらめの声、政治不信の現在地
日本一広い選挙区、組織力を左右するカネ
野党が支持を広げにくい背景の一つが、組織力や資金の圧倒的な差だ。 北海道12区は利尻富士町だけでなく、稚内市や紋別市、網走市などを含み、小選挙区で最も広い。面積は東京都の約7倍で、自民党関係者は「候補者の選挙中の移動距離は5000キロに及ぶ」と明かす。 新氏が代表を務める自民党北海道第12選挙区支部の収入総額(22年分)は1億389万円。主な収入源は企業・団体献金やパーティー収入などだ。豊富な資金により、新氏は事務所を東京に1カ所、選挙区に4カ所構える。 これに対し、川原田氏が代表の立憲民主党北海道第12区総支部の収入総額(同)は1698万円。新氏の2割にも満たず、事務所は利尻島から約250キロ離れた北見市内にあるだけだ。 黒川さんは町の敬老会に参加した際、新氏から祝電が届いたことに驚いた。「自民党は祝電や弔電などもこまめにやっていて組織の足がしっかりしています。当然、町民との付き合いで野党との差が生まれます」 だが、そんな現状に黒川さんは疑問を投げかける。「政治が家業のように世襲で続くのはいいことなのか。本当に困っている人の話を聞く耳があるのか。今回の衆院選はそれを見直すチャンスのはずです」【田中裕之】
公正公平な競争環境の議論を
「自民党はスキャンダル時の選挙でも強いよ」。今回の衆院選序盤に、ある野党幹部に情勢を尋ねると、そんな答えが返ってきました。 自民党の「政治とカネ」の問題に対しては、2021年の前回衆院選の投票率が全国トップの北海道利尻富士町でも、怒りが渦巻いていました。一方で、立憲民主党支持者の町民が言うように、町の自民党支持の雰囲気は大きく変わらない印象でした。 衆院選で高い投票率を記録してきたのは利尻富士町のような離島や地方の町村です。過疎化が著しく、政治に助けを求める住民の切実さは都会で生活しているとなかなか想像できません。そんな地域の多くで、自民党は支持を固めてきました。 政権与党に居続ける自民党は、地元の陳情を実現できる点で野党より有利な立場にあります。企業・団体献金や政治資金パーティー収入も得やすく、潤沢な選挙資金を使う「カネのかかる政治」が、国政へ新規参入しにくい壁になっています。 地方の声を国政に反映させる役割は与野党双方にあり、世襲の問題を含め公平公正な競争環境の議論を国会で深める必要があると感じます。
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。