人格破綻まで招きかねない「低血糖」の恐怖、「高くても低くてもダメ」血糖値の正しい整え方
これまで世に出てきた糖尿病に関連する本で、低血糖の危険性を強調しているものは、ほとんど見当たりませんでした。でも私は、じつは低血糖ほど体に良くないということを、アピールしていきたいと思っています。 低血糖が死亡リスクを上げるとか、低血糖が原因で不整脈や心臓の病気につながるとか、そういった指摘もされ始めてきていますので。 低血糖になると、体から活力が失われます。冷や汗が出たり、手足が震えたり、動悸がしたり、倦怠感に包まれたり、眠くなったり。誰もが、けだるさや調子の悪さを感じるでしょう。
そして、血糖値が下がりすぎると、意識障害やけいれんを起こし、最悪の場合、昏睡状態に陥って倒れてしまいます。ただたんに「調子が悪いな」では済まされないのです。 昏睡状態で倒れるまでに至らなくても、低血糖が長く続くと、糖新生が活性化して副腎ホルモンが足りなくなり、副腎疲労を引き起こします。また、コルチゾールなどの副腎ホルモンを体が必要としているときに出なくなってしまうこともあります。 また、糖新生が亢進すると、脂肪と一緒に筋肉も溶かしてしまうので、筋肉が失われることになります。筋肉量の減少は、運動能力の低下や寿命の短縮につながることが明らかなので、軽く扱うことはできません。低血糖は本当に怖いのです。
以前、次のような興味深い論文を目にした記憶があります。凶悪犯罪者ばかりが収監されているアメリカの刑務所で、囚人たちの血糖値の変動を測定する調査が行われたそうです。 結果は、平均的な数値よりもはるかに上下動の幅が大きかったといいます。囚人たちは、血糖値スパイクによって高血糖と低血糖をくり返していたようなのです。 ■人格をも破綻させかねない「低血糖」の恐怖 この論文を目にしたときは、思わず「なるほど」とひざを打ってしまいました。なぜなら、低血糖がもたらす症状のなかには、不安、抑うつ、焦燥、混乱、異常行動などが含まれるからです。もちろん個人差はありますし、上下動幅の大きい血糖値スパイクが起こっている理由は定かではありませんが、凶悪犯罪者が総じて同じような状態にある可能性が高いことは、間違いないのでしょう。