23歳になった阪神・藤浪がまるで別人になって今季初勝利!
阪神の藤浪晋太郎投手(23)が13日、横浜スタジアムで行われた横浜DeNA戦で今季2度目の先発マウンドに立ち、8回を投げて6安打1失点の力投を見せ、打線も9回に勝ち越し点を奪い、今季初勝利をつかんだ。初先発となった4日のヤクルト戦は“WBC後遺症“で9死四球と荒れに荒れて「試合にならない」と金本監督をあきれさせたが、この日はわずか1四球の変貌を遂げて、指揮官も「ほぼ完璧」と絶賛した。藤浪が今後もこの安定感をキープできれば、阪神の戦い方に計算が立つようになってくる。 試合途中に一人でタクシーで宿舎に帰った前日に23歳の誕生日を迎えた。 「毎年シーズンが始まってすぐに誕生日がくるので、あまりこの年になって感動はないんですが、23歳になって気持ちを新しくマウンドに上がって、しっかり勝つことができて良かったと思います」 23歳になった藤浪は、ヤクルト戦の惨劇からわずか8日で、まるで別人になっていた。 右打者に対してインサイドから抜けていくボールと、逆にひっかかって、アウトローのはるか向こうでバウンドするようなボールがほとんどない。立ち上がりに一死一、二塁から筒香に四球を与えたが、その後はひとつも四球を与えなかった。WBCから初の凱旋先発となった4日のヤクルト戦では、9死四球と荒れに荒れて、途中、畠山へぶつけたことが引き金になって、乱闘騒ぎにまで発展していたのだが、この日は危ないボールさえほとんどなかったのである。 ファーストストライクから仕掛けていくのが、横浜DeNA打線のチームコンセプトだが、荒れる藤浪を想定して試合前に、ラミレス監督は「ケースバイケース。藤浪は2つストライクが続かないケースも目立つので我慢も必要かな。四球を選ぶことはベースヒット以上の価値があるから」と、耐球作戦を用意していることをほのめかしていた。しかし、まったく想定が外れた。荒れることなく優等生となった藤浪に対して、耐球作戦も役に立たない。ストライクゾーンで勝負してくる藤浪に対して、再び早仕掛けしたが、4回にはロペスも倉本も初球を打って凡退。逆に藤浪のテンポを助けることになった。 6回に原口のタイムリーで先制点をもらったが、直後に梶谷にバックスクリーンの電光掲示板を直撃する同点アーチを浴びた。だが、「狭い球場なんで一発は仕方がない」と動揺はなかった。続くロペス、筒香をわずか3球で片付けて見せたのである。7回には一死二塁のピンチを迎えたが、戸柱、代打・関根を共にストレート1本で勝負して、それぞれ2球で仕留めた。試合後、キャッチャーの梅野は「力で押せた」という。 藤浪のテンポとストライクゾーンでの勝負と、9回の高山の決勝タイムリーなどで奪った3得点は決して無縁ではない。三振よりも内野ゴロ。終わってみると、三振は3つだったが、内野ゴロはバントも含めると実に15個を数えた。鳥谷や上本の好守にも救われた。 「前回あまりにもよくなかったんで、今回はしっかり投げたいと思ってましたし、しっかりと調整してきたので。それを出すだけと、シンプルに考えました。フォアボールとか、余計なものは少なく、ホームランは打たれましたけどテンポよく、内野ゴロも多く、守りにも助けてもらいながら投げられた」 “WBC後遺症”に悩まされていた。例年と違うペースでキャンプを過ごし、オープン戦が始まる前に侍ジャパンに合流した。侍ジャパンでは、1次ラウンドの中国戦で2イニング投げただけ。米国のアリゾナでの強化試合では先発したが、明らかに実戦不足だった。しかも、WBCの硬くて急傾斜のマウンドに合わせてフォームを微調整して、“滑る”と評判のWBC公式球にフィットしたカットボールを多用するなど、ピッチングスタイルそのものをWBC用に変えていた。 本来、器用ではない藤浪が、そこから再びNPB仕様に戻す作業は、簡単ではなかった。しかも、藤浪は、キャンプの初日から力みをなくす新しいピッチングスタイルを模索していた。満足に投げ込めないまま、その2017年スタイルを取り戻さねばならなかったのである。だが、藤浪は、9死四球の大乱調から、わずか8日でそれをやってのけた。