組織の暗黙知を形式知化する方法
■意思決定プロセスの3段階モジュール 意思決定プロセスをどのようにモジュール化し、何を形式知化すればよいのでしょうか。 意思決定プロセスの身近な例を考えてみましょう。例えば、賃貸マンションを探している状況を考えます。どのマンションを借りるかを決めることは、まさに意思決定です。では、皆さんは、どうやって決めるのでしょうか。まず、不動産サイトや店舗に行って候補となる物件を探し、次に、物件の間取りや利便性、家賃といった情報を仕入れるでしょう。最後に、自らの判断基準に従って物件を選ぶことでしょう。 これを一般化すると、意思決定プロセスとは次の3段階のモジュールから構成されるフレームワークで記述できます。 Step1 選択肢を集める → Step2 手掛りを得る → Step3 選択をする この3段階モジュールのフレームワークは、様々な意思決定に適用できます。例えば、商品発注量の決定という意思決定においても、発注量を選択肢とみなせば、このフレームワークに収まります。計画策定という意思決定についても、条件を満たすすべての計画を選択肢とみなせば、このフレームワークに収まります。原因特定という意思決定についても、原因の候補を選択肢とみなせば、このフレームワークに収まります。筆者は、意思決定プロセスをこの3段階モジュールのフレームワークで捉えるようにしています。 それでは、データ分析は、この意思決定プロセスの中でどのような役割を果たすのでしょうか。例えば、生保険会社が、新たに売り出す「がん保険」の案内を見込み客だけに送付したい状況を考えましょう。生命保険会社は、全顧客の中から「がん保険」の案内を送る会員を選択するために、各会員の契約確率を計算します。この契約確率は、(Step2)の手掛りに相当します。 ほかにも例えば、スーパーマーケットが、アイスクリームを注文する量を決める状況を考えましょう。スーパーマーケットは、適切な注文量を決めるために、過去の販売データを分析してアイスクリームの販売量を予測します。この販売量の予測値は、Step2の手掛りにあたります。筆者の経験では、意思決定プロセスにおけるデータ分析の役割は、Step2の手掛りを提供することにあると考えて、実務的にはほとんど差し支えないと思います。 意思決定プロセスとは判断や決定の製造工程であることを意識して捉え直してみましょう。Step1で選択肢を製造ラインに投入し、Step2ではデータ分析により各選択肢に手掛りを付与し、Step3で手掛りをもとに各選択肢を取捨選択する、という流れです。あたかもモノの製造プロセスのように見えませんか。