「緊張で頭が真っ白」広がる若者の″電話恐怖症”◆達人が教える応対のコツ【時事ドットコム取材班】#令和に働く
◇「最終手段」としての電話
若者世代に電話応対のルールやマナーを学んでもらおうと、社員研修に「検定試験」を取り入れる企業も多い。日本電信電話ユーザ協会が実施する「電話応対技能検定(通称:もしもし検定)」は、正しい日本語や電話の取り次ぎ方法などに関する筆記試験と、電話応対の実技試験(3級以上)で構成。2012年度の受検者は2658人だったが、19年度には1万2564人に増加した。20年度以降は新型コロナウイルスの影響で受検者数が減ったものの、09年の開始以来、既に10万人超が受検したという。 検定を導入した企業は、保険会社や証券会社、メーカーなどさまざま。同協会の佐藤幸雅事業推進部長は「最近はメールや人工知能(AI)によるチャットボットなど、企業への問い合わせの入り口が多岐に渡っているが、『最後はやはり人の応対』と思っている企業が多いのでは」と説明。「AIがいくら優秀だとしても、顧客としてはやはり人に応対してもらって、安心感を得たい。どんな電話応対をしているかが、その企業のブランド価値に繋がっている」と話す。 電話による問い合わせの内容も変化してきているようだ。同協会の千代田・東京中央地区協会事務局長の山地正浩さんは、「今は、簡単な質問であれば、ホームページのQ&Aやチャットボットなどで解決できるので、電話応対の中身は非常に濃い内容になっている」と指摘。「ネットでうまく手続きができなかったり、トラブルになってしまったりした時など、電話が『最終手段』として重視されるようになり、答える側も高度なクオリティーが求められている」と語った。 ◇「電話が得意」になるには? 取材を通じて分かったのは、文字コミュニケーションの発達で「電話恐怖症」の若者が増える一方、電話応対は企業ブランドの維持や顧客対応の「最終手段」として、今後も欠かせないビジネススキルであり続けるということだ。では、どうすれば自信を持って電話に出られるようになるのか、日本電信電話ユーザ協会が主催する「電話応対コンクール全国大会」で日本一に輝いた、大同生命保険アクティブコミュニケーションセンター(熊本)の橋本美穂さんに話を聞いた。 ―電話応対で心掛けることはありますか。 電話は相手の顔が見えません。だからこそ、言葉に感情を乗せるようにしています。会社の代表として電話に出るわけですから、口角をあげて明るくさわやかに発声するといいのではないでしょうか。言葉遣いは「慣れ」の部分もあるので、初めは気にしすぎず、誠心誠意対応するのが重要です。 ―クレームには、どのように対処するべきでしょうか。 クレームの電話を受けたときは、会社の一員として、まずは真摯(しんし)に謝らなければいけません。一方で、心のどこかで、「この人は私に怒っているのではない」という気持ちを持っておきましょう。そうすることで心へのダメージを軽減することができます。話しているうちにお客様の怒りがおさまってくる場合もあります。 ―電話が苦手な新入社員や若手社員に伝えたいことはありますか。 電話が苦手なのはあなただけではありません。電話を上手に取れないことで自分を責める必要はなく、みんな同じなんだなと思えば、少しは気持ちが軽くなるのではないでしょうか。慣れない職場で、自己判断できないことはたくさんあると思います。まずは電話の向こうの方の話をしっかり聞いて、分からない部分については折り返しする旨を伝えましょう。初めは完璧にできなくて当然です。 この記事は、時事通信社とYahoo!ニュースの共同連携企画です。