「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」が開催中──GQエディターが選ぶ作品展4選
世界から熱い視線が注がれる「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024」。イチオシの展示作品をGQエディターが解説する。 【写真を見る】展示作品をチェック!
京都で知る写真の新たな可能性
2012年にはじまった「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、毎年春に京都を舞台に開催される大規模な写真祭だ。開催期間は約1カ月。毎回、作品はテーマごとにキュレーションされ、市内にあるギャラリーや歴史的建造物、工場跡など、さまざまな空間で展示される。2024年のテーマは「SOURCE(源)」。生命の創造であり、すべてのものの起源を意味し、その源から生まれる新しいものを見出す。本展には10カ国から集まった13の展覧会が開催される。プレス向け内覧会で出合った注目の作品展を紹介する。 ■ジャイシング・ナゲシュワラン「I Feel Like a Fish」KG+SELECT Award 2023 Winner インドのタミル・ナードゥ州ヴァディパッティ村出身のジャイシング・ナゲシュワランは、独学で写真を学んだアーティストだ。2023年の「KYOTOGRAPHIE」でKG+SELECTのグランプリを獲得し、本年度のメインプログラムに参加した。「I Feel Like a Fish」は、幼少期の記憶や家族の歴史を振り返り、ダリット(ヒンドゥー社会における被差別民)の抵抗を表現した。たとえば縦の写真作品はカースト制度の階級を表し、横の写真は家族のつながりを意味するという。何気ないスナップのように見えてもどこか鬼気迫るものは彼の過酷な生い立ちを想起させた。 ■展示会場:TIME'S 住:京都市中京区三条通河原町東入中島町92番 ■ヴィヴィアン・サッセン「PHOSPHOR|発光体:アート&ファッション 1990–2023」Presented by DIOR In collaboration with the MEP - Maison Européenne de la Photographie, Paris 数々のファッションブランドとのキャンペーンビジュアルを手掛けてきた、ヴィヴィアン・サッセンの日本初の大規模個展が実現した。フランス・パリにあるヨーロッパ写真美術館(MEP)で開催された回顧展とコラボレーション企画として開催され、サッセンによるDIORのアトリエから着想を得たスライドショーの作品から、学生時代の初期の作品までが一堂に会する。なかには大型コラージュの展示もあり、見ごたえ抜群だ。京都新聞ビルの地下にある印刷工場跡というロケーションも迫力ある。 ■展示会場:京都新聞ビル地下1階(印刷工場跡) 住:京都市中京区烏丸通夷川上ル少将井町239 ■バードヘッド(鳥頭)「Welcome to Birdhead World Again, Kyoto 2024」Presented by CHANEL NEXUS HALL アートユニット「バードヘッド」による壮大な展示も見逃せない。中国・上海出身の宋涛(ソン・タオ)と季炜煜(ジ・ウェイユィ)のふたりが手掛けた作品は、写真という有限のメディアで、無限を表現しようと試みている。シルクスクリーンで木材に写真画像をプリントした「Bigger Photo」シリーズはその巨大さにも驚く。また立体のインスタレーション作品も展示され、こちらも興味を掻き立てられる。会場は帯匠・誉田屋源兵衛の竹院の間、黒蔵。荘厳なシチュエーションも迫力大だ。 ■展示会場:誉田屋源兵衛 竹院の間、黒蔵 住:京都市中京区室町通三条下ル 西側 ■クラウディア・アンドゥハル「ヤノマミ ダビ・コベナワとヤノマミ族のアーティスト」 ヤノマミは、アマゾンのジャングル奥深くに今も太古の生活様式を脈々と受け継ぐ先住民族だ。近年、大規模な森林伐採や金高騰による違法採掘など民族の存亡に関わるほど大きな迫害を受けている。本展ではその戦いの歴史を記録したクラウディア・アンドゥハルの作品や、ヤノマミ族のアーティストたちが描いたドローイングや映像作品を展示。豊かな色彩やプリミティブなタッチに触れ、彼らに訪れている危機を肌で感じたい。 ■KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2024 会期/2024年4月13日(土)~5月12日(日) 会場/京都市内各所 https://www.kyotographie.jp/
編集と文・岩田桂視(GQ)