「将棋界は古参ファンが幅を利かせる ことなく、新入りにも優しいんです」 初心者に普及させたい将棋界の魅力とは?
知られていないネタを提供してくれる
――旧将棋会館(近く取り壊し予定)の中を山口恵梨子女流三段に案内してもらっている様子は漫画にされていましたよね。 さくら はい。私はマニアックというか普通は見られない裏の部分を見たくて給湯室にも案内していただきました。押し入れに布団が用意してあることも漫画にしましたね。将棋は朝10時に対局が始まり、23時を過ぎることも珍しくないのですが、電車が無い時間になることもあって、記録係をする奨励会員(棋士の養成機関で修行をしている会員)はその布団で仮眠して帰ることもあるそうです。 ――『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』の漫画制作の流れを教えて下さい。 さくら 山口先生への取材は3~4カ月に一度です。Zoomで2時間くらい。連載3~4回分のネタをまとめて聞きます。漫画だからセリフだけではなく背景も必要です。この部屋には何人くらい、誰がいて、こんなものが置いてあった、そんなことも細かく質問します。 連載は1回6ページ。まず、山口先生のお話を録音したものを文字に起こします。そしてプロット(大まかなストーリー構成)を作り、ネーム(セリフと絵の下描きで構成する)を描き、編集者のOKが出たらデジタルで絵を描いて仕上げます。途中で山口先生や日本将棋連盟にチェックもお願いしています。 今は将棋の記事がたくさん出ています。山口先生はそんな記事には出ていない新しいネタをよく話してくれ、きっと記事をよく読んで考えてくれているのだと思います。でも漫画になっても問題にならないようにも気を付けていただいて、大きな修正が入ることは滅多にありません。 ――好きなことを漫画にして大勢の方に読んでもらっているわけですが、同じように好きなことを仕事にしたい人へアドバイスはありますか。 さくら ブログとnoteに漫画を描いて、最初にお仕事のお話をいただいた頃には、ある程度作品が溜まっていました。私の場合それが準備期間だったと思います。ブログにメールアドレスを載せていて、そこからお仕事の依頼が来たこともありました。連絡しやすくするのは大事かも。 ただ、趣味ならばやめられるけれど、お仕事にするとやめにくいとか、好きな世界の嫌な部分が見えてしまうとかデメリットもあり、あまりお勧めできない部分もあります。将棋に限らずどんな世界でもそうだと思うのですが。 ――これから描いてみたいことはありますか。 さくら もちろん「山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々」は長く続けたいです。実在の棋士、女流棋士の方が登場する漫画なので、迷惑をかけないように気を付けながら。他には、プロ棋士の一歩手前の過酷な三段リーグには様々なドラマがあると思うので、いつか描いてみたいなと思っています。 さくらはな。 マンガ家 千葉県出身。2013年5月3日に突然将棋を始める。将棋フリーペーパー「駒doc.」にて『将棋好きに成りました! 』、竹書房「本当にあった愉快な話」にて『えりりんの女流棋士の日々』を連載中。著書に『将棋「初段になれるかな」大会議』(扶桑社)などがある。 X:@kusattamarimo
土井尚子,宮田聖子