日銀が買ったETF、いまやプライム市場全株式の時価総額の7% 世界に例のない中央銀行の株価下支えスキームの出口は
日本銀行は、景気や株価下支えのために続けてきた上場投資信託(ETF)の新規買い入れの終了を3月の金融政策決定会合で決め、実施しました。ETF買い入れは、安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の柱の一つ。ETFとはどのようなもので、買い入れ終了でどんな影響があるのでしょうか。金融緩和から引き締めへ踏み出した日銀が次の金融政策決定会合を4月25、26日に開くのを前に、専門記者グループのフロントラインプレスが「ETF」をやさしく解説します。 【図】日銀のETF購入の流れと効果 (フロントラインプレス) ■ そもそもETFとは ETFはExchange Traded Fundの略で「上場投資信託」と訳します。日銀が購入対象としてきたETFは日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株価指数に連動するように設計されており、ETFの代表的なものです。 日銀は多くの銘柄で構成されるETFを莫大な資金で買い入れることで、日本株全体の下支えを狙いました。ETF購入のために支払った資金が世の中に出回り、現金の流通量を大幅に増やすことで、消費や企業の設備投資の喚起など景気の底上げも目指しました。 ETFは証券取引所に上場されています。企業の株式と同じように、個人でも一口数千円から毎営業日に売り買いできます。日経平均の上げ下げを予想して利益を狙う主要な金融商品には、他に「日経225先物」があります。 しかし、先物には決済期限があり、長く保有できません。これに対し、ETFには決済期限がなく、持ち続けることが可能。株価指数に連動するETFは多くの銘柄で構成されているため、投資のリスクも分散できます。
■ 世界に例のない「中央銀行が株式市場を下支え」 ETF買い入れは、アベノミクスを支えた日銀の「異次元の金融緩和」策の一つでした。異次元金融緩和は、年2%の安定した物価高と賃金上昇の好循環を生み出すことを狙いに、黒田東彦・前日銀総裁の任期がスタートした2013年4月から始まりました。 このため、ETFの買い入れも黒田時代に導入されたと思われがちですが、実際にETF購入を始めたのは黒田氏の前任、白川方明総裁(当時)で、2010年のことでした。 中央銀行が株式市場を下支えする目的で、ETFを通じて企業の株式を保有する例は世界で他にありません。 日銀は、株式市場が一定程度以上の下落に見舞われた際、半ば機械的にETFを買ってきました。しかし株式の価格は、各投資家が個別企業の業績見通しなどに従って売買した結果として形成されるのが市場本来の姿です。 日銀のETF購入はこれを歪めるものだとして、根強い批判も存在します。日本以外の各国の中央銀行がこの政策を採用しない背景にはこうした事情があるようです。