「想いと志」次世代に 映画「天外者」1日限定特別上映&製作総指揮・廣田稔さんらトークセッション
2020年12月公開の映画「天外者(てんがらもん)」が11日、全国約240の映画館などで1日限定で特別上映された。五代友厚プロジェクト主催、奈良新聞社共催の奈良市会場(同市三条町のエヴァンズ・キャッスル・ホール)には計2回の上映に約120人が来館。製作総指揮を務めた廣田稔さんや講談師の玉田玉秀斎さんらによるトークセッションもあった。 [写真]イベント終了後、三浦さんが写った映画ポスターを撮影するファン=11日、奈良市三条町のエヴァンズ・キャッスル・ホール
天外者は鹿児島の方言で「すごい才能の持ち主」を意味する。薩摩藩の下級武士から身を起こし、幕末・明治期に近代日本産業の礎を築いて「大阪経済の父」と呼ばれる大阪商法会議所(現・大阪商工会議所)初代会頭の五代友厚(1835~85年)の生涯を描いた作品で、五代役を俳優の故・三浦春馬さんが演じた。 映画では、愛する人の理不尽な死と約束の言葉を胸に刻み、五代が大阪商人を前に「金も名誉もいらない。私は夢のある未来がほしいだけだ。みんなが夢を見られるような国がつくりたい」と語り、自身の生きる目的と向き合う場面もあった。 廣田さんは2013年、共同プロデューサーの鈴木トシ子さんらと「五代友厚プロジェクト」を始動。五代の「想(おも)いと志」を次世代に継承する取り組みの一環として映画を製作し、完成後は毎年全国各地で本作の特別上映を続けている。 トークセッションで、廣田さんは「誰もが生きる目的を持たずに生まれた。生存すること以外に目的などなかった」と説明。一方で、人は成長すると、生きる目的なしでは不安になるとし「目的探しを続けることが人生ということなのかもしれない」と語った。
玉田さんは、映画という人生の物語を描く芸術について「世の中を変える力があると信じている」と熱弁。三浦さんが渾身(こんしん)の力を込めて演じた本作も「その一つ」とたたえた。 会場の最前列中央の席には、作品の完成を見ることなく20年7月に亡くなった三浦さん個人を写した映画宣伝用ポスターが置かれ、上映終了後、大きな拍手が三浦さんら映画製作者に送られた。