『源氏物語』の英訳を「日本語訳」 桐壺更衣は〝ワードローブ〟の姫君 ウェイリー版で深まる作品の理解
「日本の偉大なオリジナル作品」を探した背景
水野:英訳文自体もおもしろいですよね。空蝉の脱いだ衣を、ヨーロッパ文化の人にも理解できるように、「スカーフ」と訳していたのにびっくりしました。 たらればさん:個人的に、彼の英訳で「おお、なるほど!」と感動したのは、「桐壺更衣(光源氏の実母)」を「ワードローブの姫君」と訳したところでした。 つまり、「更衣」ってワードローブ担当、「帝の衣装係」なわけです。着替えを手伝うから「お手付き」が発生する。だから本来「妻」にはなりえないんですね。ことばの意味を英訳で改めて再発見しました。 たらればさん:桐壺帝の寵愛を受けて子をなし厚遇された桐壺更衣は、帝の妻である弘徽殿女御(レディ・コキデン)にとってみれば、「衣装係の分際で!」という怒りがあったんだろうな…と、そういう実感も生まれるわけです。 水野:「更衣」では具体的にイメージできていませんでしたが、「衣装係」と聞くと、たしかに「位」が低そうな姫君だな……ということが伝わりますもんね。
清紫対比論、ウェイリーが記したのは…
水野:前回、「清紫比較論」の話も出ましたが、ウェイリーはどうだったのでしょうか。 たらればさん:ウェイリーは『枕草子』も(抄訳ではありますが)英訳しているんですよ(『ザ・ピローブック』)。 そして「レディムラサキもすごいけど、清少納言もすばらしい」と書き残しています。おれたちのウェイリー、さすがです!! 『源氏物語』と『枕草子』を文字量で比べると、約100万字と約10万字で、10倍ぐらい違うので、研究や訳書の量でいうと源氏物語が圧倒的に多いのは当たり前なんですけどね。それはそれ、これはこれで。 水野:大河ドラマをきっかけに、改めて平安文学を読んだわたしですが、ウェイリーのように「どちらもすばらしい」という考え方でいたいなぁと思います。 ◆これまでのたらればさんの「光る君へ」スペース採録記事は、こちら(https://withnews.jp/articles/keyword/10926)から。 次回のたらればさんとのスペースは、11月17日21時~にこちら(https://x.com/i/spaces/1LyGBgEbkRYJN)で開催します。