思わず体が震えた…ゴールドマンサックス研修初日で浴びた、エリートたちも衝撃の「洗礼」
世界トップクラスの地位と報酬が約束されたゴールドマン・サックス。だがその実態は、金と女性に対するおそるべき強欲、嫉妬にまみれた職場だった――。 【マンガ】iPhoneが発表された日にアップル株を「100万円」買っていたら 同社の元マネージング・ディレクター(上位8%の幹部職)の女性が1998~2016年の在職期間に目撃した、ミソジニー(女性嫌悪)と人種差別にあふれる、堕ちた企業風土を明らかにする衝撃の暴露本『ゴールドマン・サックスに洗脳された私』から、1998年の研修初日の強烈な体験をお届けする。 巨額の退職金を捨てて、秘密保持契約書(NDA)へのサインを拒否。同社の内幕を告発する道を選んだ彼女の回顧録を読み進めるうちに明らかになる、金融資本主義の欺瞞と、その背後にある差別的な思考とは?
ウォール街の仲間入りをした日
エレベーターのドアが開くと、黒や紺のスーツを身にまとった大勢の人が、広いロビーで談笑していた。床から天井まである大きな窓からは陽光が燦々と降りそそぎ、窓の外には光り輝く港と自由の女神が見える。私は受付のデスクに行き、震える手で自分の名札を探した。あった。ジェイミー・フィオーレ。黒くて太い文字で印字された私の名前。私にはここにいる権利がある、ということだ。ついにウォール街の仲間入りを果たしたのだ。 みんなのあとについて、朝食が用意されているパントリーに向かった。私のほかに女性がいないか、ざっと見まわす。ほんの数人しかいないが、みんな、メイクも髪型も完璧だ。まるで、たったいまヘアサロンから戻ってきたみたいだ。あわてて自分の髪に手をやると、いまいましいことに、湿気のせいでチリチリになりはじめていた。チェリーの香りのリップクリームをぬっただけで、メイクをしていない顔は、ピザ生地みたいに白くてかさついている。
映画館かと思うほど大きな会議室
ベーグルとコーヒーを持って、映画館かと思うほど大きな会議室に向かった。座席は階段状になっていて、100人以上は入れそうだ。誰もいない演壇があり、その後ろに設置された巨大なスクリーンには、ゴールドマン・サックスのロゴが映しだされている。私は通路ぎわの席に座ることにした。隣には背の高いブロンドの男性がいた。あごのラインがシャープで、ブルーの瞳がきらきらと輝いている。アバクロンビー【訳注:アメリカのカジュアルファッションブランド】のモデルみたいだ。 「テイラー・ヒューズだ。ペンシルベニア大学ウォートン校出身。経済学専攻」まじめで礼儀正しい口調。まるで軍人だ。ゴールドマン・サックスの研修はブートキャンプのようなものだと言われているのを思い出した。 「ジェイミー・フィオーレ。ブリンマー大学出身。数学専攻よ」私も同じように答えた。自分が言うと、なんだか変な感じがした。彼は白くて大きな手で私の手を固く握った。あまりに力強くて指の関節がごりごりとこすれる。あいさつを終えると、彼はウォール・ストリート・ジャーナルに目を戻した。