「キノコ雲」がシンボルの街を舞台に描く映画『リッチランド』 原爆だけじゃない「負の歴史」「加害の歴史」との向き合い方 被爆地・広島でルスティック監督が語った「和解」とは?
■叙情詩のように描かれるコミュニティの歴史 テーマは「和解」。映画では、この町が、元々は先住民の土地だったことや、放射線被ばくによる病気を嘆く住民の声、原爆投下後76年経って初めて開催された追悼式典に、被爆3世のアーティストが参加する様子などが、歌や詩の朗読を織り交ぜて描かれます。 浮かび上がるのは、「核兵器の威力と被害」という対立構造ではなく、ひだのように折り重なったコミュニティの歴史です。 映画を観た人は… 「アメリカには、アメリカの事情とか、その、放射線とかで苦しんでられる方がいるんだなっていうのがわかったんで。勉強になりました」 「どちらかがいいとか悪いとかではなくて、色々な視点を見る人が考えてくださいっていう形で、こう映し出してるところがいいなと思いました」 「実際にはそこで暮らしている人々がやっぱり核の被害者になってしまってる。被害者なのに、やはり核兵器をね、作って誇りにしてるっていう、その矛盾するところがなんとも言えない現実ですよね」 アメリカの中でも、政治的な考え方や世代によって原爆についての考え方は様々です。 ■「和解」とは…? 前進や忘却ではなく… アイリーン・ルスティック監督 「私としては、どちらの人にとっても、この映画で何か新しいことを、見たり聞いたり学んだりできるんじゃないかって期待していますし、そういう映画になっていると思っています」 そして、この映画は、核の問題だけではなく、世界中の地域ごとにある複雑な負の歴史、暴力的な加害の歴史についての取り組み方を示していると、ルスティック監督は言います。 アイリーン・ルスティック監督 「和解とは、起きたことをお互いにもう忘れようよっていうことじゃなく、むしろお互いに起きたことを確認して、一緒に感じるということではないかと。それって全然違った心の動きであり、目的地なんです」 「忘れてもいいよって言われたとしても、いや、忘れないと。和解の目的は、前進したり忘れたりすることではなく、自分達が難しい歴史を抱えてるってことを確認しあうことだとさえ思います」
監督は、この映画の公開は、映画「オッペンハイマー」と同じ2023年で、意識して作ったわけではない。とのこと。そして「『オッペンハイマー』が描かなかったものに私は興味がある」と話していました。 この映画「リッチランド」は8月3日から、広島市西区の横川シネマで3週間にわたって上映されます。
中国放送