「全員参加」「自分ごと化」を目指すコスモのDX戦略 社員の意識改革に向けた「Cosmo’s Vision House」とは
経済産業省の「DXレポート2.2」によれば、国内でDXに取り組む企業の数は増加傾向にあります。一方で、DX推進による成果をそれほど実感できていないという現状もあるようです。このような状況下、コスモエネルギーホールディングス株式会社では、2021年11月に外部からCDO(Chief Digital Officer)を招き、2022年3月にはDX戦略「Cosmo’s Vision House」を策定。「コスモのDXとはなにか」を示しながら、さまざまな施策に取り組んでいます。同社コーポレートDX戦略部長の夏目久義さんに、注力する「全員参加型」への思い、社員一人ひとりが主体的に関わるための「自分ごと化」のポイント、経営層や外部パートナーの連携などを伺いました。
経験と勘から脱却するためのDX
――DX推進に取り組むことになったきっかけをお聞かせください。 桐山前社長(現会長)の「コスモの将来のために『本気のDX』をやっていこう」という思いから、コスモのDXは始まりました。2021年11月には、外部からCDO(Chief Digital Officer)として、ルゾンカ典子さんを招聘。コスモエネルギーグループ全体のDX戦略策定、DX活動の推進支援、データ基盤の整備やデータ分析の実践、DX人材の育成、外部企業とのパートナリングなどを行うコーポレートDX戦略部が新設されました。 私は部の立ち上げメンバーとしてアサインされ、ルゾンカさん+社員3名の4名でDXへの取り組みを開始しました。最初のメンバーは、ルゾンカさんがコスモで活動を開始する際に必要な経験を持った社員として、経営企画部門、システム部門、販売部門からそれぞれ1名ずつのメンバーが集められました。私はそれまで経営企画まわりの仕事に携わる機会が多くあり、社内に広くネットワークを持つことから、その一人としてアサインされました。 ――本格的なDXに乗り出した目的や背景を教えてください。 石油業界は歴史のある業界で、ビジネスの流れが確立されています。当社も社内にこれまでに培ってきたノウハウや知見が多くあります。そのため年間のサイクルで発生する事象がある程度は事前に想定でき、それに対して先手を打っていれば滞りなく業務を遂行することができます。若手社員は、先輩たちのそんな仕事ぶりを学び、受け継いでいくといった流れがあります。 石油業界に限らず、歴史ある企業であれば業務の高度化と分業化が進み、ビジネスモデルが確立していると思います。そのような環境下では、業務を遂行する上で「経験と勘」がものを言う場面も多いでしょう。実際、当社でも「経験と勘」に頼る場面は多々あります。このように伝承していくやり方は、世の中に変化がなければ、そのままでも問題ありません。しかし、少子化とともに石油需要は減少傾向にあり、電気自動車に象徴されるような脱炭素を目指す流れもあります。桐山前社長からも「このままではよくない」「変わらなければいけない」という言葉とともに、「ビジネスを変えていこう」という大きな方向性が示されました。 このような背景から、「経験と勘」のみに頼るのではなく、データを使って物事を考え、若い人たちが積極的に発信してアイデアを出せる文化を作ろうと動き始めました。 ――コーポレートDX戦略部が新設された当時のデータ活用の状況はいかがでしたか。 たとえば生産計画の策定、販売実績管理などといった、当たり前のデータ活用は行っていました。一部には、統計ツールを使っている部署もあります。しかし、「今必要とされている“データ活用”ができているか」と言うと、決してそうではありません。多くの社員は、日々の実績の整理、経験と勘の後ろ盾を整理するためにデータを使っています。 世の中では、取得したデータがさまざまな形で活用されているのにもかかわらず、私たちは使いこなせていない。この状況を改善し、データを積極的に活用していく環境を作ることを目指しています。