大分市民に愛され68年、あたみ温泉が28日閉店へ 店主「感謝の気持ちでいっぱい」
大分市末広町で68年間、市民に愛されてきた「あたみ温泉」が28日に閉店する。JR大分駅府内中央口から徒歩3分の名湯。駅周辺が再開発で変貌を遂げる中、昭和の銭湯の風情を守ってきた。店主の榎本末子さん(85)は「命ある限り続けたかったが仕方ない。多くのお客さまに支えてもらい、感謝の気持ちでいっぱい」と話している。 1956年に榎本さんのしゅうとめが開き、83年に温泉を掘削した。豆タイルをあしらった外壁や木製ロッカー、年季の入ったカラン、富士山などの背景画はとても雰囲気がある。 黒褐色の湯は肌触りのいいナトリウム炭酸水素塩泉。源泉の温度は52度で加水、加温、循環などはせず掛け流し。なじみの地元客や出張、観光で訪れる人も多い。
夫が他界した99年から店を切り盛りしてきた榎本さん。今年、転倒して足を骨折し、営業は従業員に任せて療養を続けてきたが苦渋の決断をした。 5年前から通い始めた同市の会社員、小原誠也さん(33)は「何といっても熱めのお湯がいい。レトロなたたずまいも魅力。寂しくなります」。 開店当時から毎日通う女性(88)は「肌がつるつるになり、風邪一つひいたことがないのは、この温泉のおかげ。湯船や脱衣所でおしゃべりするのが楽しかったのに」と肩を落とした。 存続を願う常連客らは現在、署名運動に取り組んでいる。榎本さんは「皆さんの優しさに涙が出る。番台に座り、たくさんの人と触れ合えたのが一番の喜びです」と話している。