人気絶頂となった『ブギウギ』モデル・笠置シヅ子。11歳の美空ひばりはその歌をレパートリーに「ベビー笠置」と呼ばれるも…
◆シヅ子とひばり この『結婚三銃士』公開の翌週、大映系で封切られたのが喜劇の神様・斎藤寅次郎監督のオールスター音楽喜劇『のど自慢狂時代』(3月28日・東横映画)である。 灰田勝彦、並木路子、美ち奴ら人気歌手をフィーチャー、古賀政男まで出演しての賑やかな作品。 11歳の美空ひばりが出演して、小学校の教室で「セコハン娘」を歌うシーンがあったという。 残念ながら完全なフィルムが現存せず、そのシーンは見ることが叶わない。 続いて寅次郎監督は、6月7日公開『新東京音頭 びっくり五人男』(吉本プロ=新東宝)でもひばりを起用。 古川ロッパ、エンタツ・アチャコ、キドシン、川田晴久の五人男の前に現れる孤児の役。 川田のギターで「ジャングル・ブギー」の替え歌を唄うシーンは、のちに『ラッキー百万円娘』として再上映された改題再編集版にも残されているが、実は、当時「東京ブギウギ」を唄うシーンがあったのだ。 ひばりはレコードデビュー前で、まだ持ち歌がなく、ステージでも笠置の歌を唄っていた。 オミットされた「東京ブギウギ」のシーンが、近年発見された。 1951(昭和26)年に新東宝が製作した短編『ひばりのアンコール娘』に収録されていたのである。
◆「ベビー笠置」 この年1月10日から17日まで、日劇では灰田勝彦の「ラヴ・パレード」十二景(作・演出・白井鐡造)公演が行われ、美空ひばりがシヅ子の「ヘイヘイブギー」を歌わせて欲しいと、有楽座「愉快な相棒」出演中の笠置と服部に許可を求めた。 服部は、ひばりには「東京ブギウギ」が相応しいと判断して、曲の変更を伝えた。 しかしひばりは「東京ブギウギ」を練習していなかったために、出だしを失敗してしまった。 その話に尾鰭がついて、笠置と服部がひばりに「歌うな」とクレームをつけたということになってしまったが、真相はこうである。 とはいえ5ヶ月後の映画『びっくり五人男』での、ひばりの「東京ブギウギ」のパフォーマンスは見事である。「ベビー笠置」と言われたのも頷ける。 8月10日、ひばりは、松竹映画『踊る龍宮城』(7月26日公開・佐々木康)の挿入歌「河童ブギウギ」(作詞・藤浦洸、作曲・編曲・浅井挙曄)でレコードデビューを果たした。 実はこの時、コロムビアでは、ひばりのデビュー曲を「東京ブギウギ」にしようという案があったが、笠置と服部がそれに反対した。 ひばりの力量を考えてデビュー曲はオリジナルが相応しいと判断したからだろう。 「河童ブギウギ」はヒットに至らなかったが、9月発売の第二弾「悲しき口笛」はまさにひばりのオリジナリティーあふれる楽曲で、彼女の「これから」を決定づけた。 ※本稿は、『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(興陽館)の一部を再編集したものです。
佐藤利明
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