ウクライナ侵攻がもたらす結末は? 繰り返されるソ連の歴史から考える
裏目に出るロシアの天然ガス対策
ロシアの石油・天然ガス収入は2020年に2190億ドル(約31兆4900億円)に達した。石油と天然ガスを合計すると、ロシアの輸出の60%、連邦予算の40%を占める。プーチン大統領は、欧州向けの天然ガス輸出を減らし価格を引き上げることで、自国の天然資源の力を誇示しようとした。ロシアは石油と天然ガスの輸出から1日当たり5億~10億ドル(約720憶~1440億円)の収入を得て、ウクライナ侵攻の資金にしている。 だが、それは裏目に出ている。石油・天然ガスの国際市場でロシアが占める割合が縮小しつつあるほか、英国のBPやシェル、米国のエクソンモービルやノルウェーのエクイノールといった世界の大手石油企業もロシア事業からの撤退を進めているのだ。一方、ウクライナは欧州第3位の天然ガス埋蔵量を誇る。ソ連の構成国だったウクライナ共和国は1960年代から70年代にかけて年間約700億立方メートルの天然ガスを生産していたが、ソビエト中央政府が生産をシベリアに移したため、1991年にはウクライナの生産量は半分以下になっていた。しかし現在、ウクライナ国営ガス企業ナフトガスは、欧州向けに天然ガスを供給する可能性を示唆している。 欧州政策分析センターのエドワード・ルーカス上級研究員は次のように指摘する。「2年前、欧州のガス価格は急騰した。ところが、現在はウクライナ侵攻開始前の水準をわずかに上回る程度に戻っている。それはロシアの核兵器のようなものだ。つまり『ほえない犬』ということだ」 先述のルジン上級研究員は、ウクライナ軍によるロシアの燃料貯蔵施設や発電所への攻撃は報復的なもので、ロシア側に同じ思いをさせることが狙いだとみている。ロシアの送電網は脆弱(ぜいじゃく)で、回復力を高めるためには最新の技術が必要だ。ウクライナ軍によるエネルギー施設への攻撃は、ロシアの送電網の脆弱性と相まって、この冬、ロシア国民に多大な苦しみをもたらすことが予想され、ウクライナ国民が経験した苦難を上回るものとなるかもしれない。 最も切実な問題は、ロシアの独裁政権が存続するかどうかだ。経済制裁や軍事上の損失が続けば国家の負担が増すことになり、プーチン大統領の指導力に異議を唱える機会を野党に与える可能性もある。