ハリー・ポッター役の吉沢悠が熱く語る! 3年目を迎える舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の見どころは
2022年7月からTBS赤坂ACTシアターでロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』。小説『ハリー・ポッター』シリーズの作者であるJ.K.ローリングと共に、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーンの3人が舞台のために書き下ろした物語で、小説の最終巻の19年後を描いた作品だ。 【全ての写真】ハリー・ポッター役を務める吉沢悠 3年目を迎える本作。ハリー・ポッター役を務めることになった吉沢悠(平方元基とWキャスト)に本作に懸ける思いや見どころをたっぷりと聞いた。 ーーいよいよハリー・ポッター役のデビューですね。今の心境は? 劇場での稽古も始まって、いよいよだなという気持ちです。継続キャストもいる中で、新たなキャストが加わった3年目の公演。僕は2年目の大貫(勇輔)さんのハリーを観ているのですが、あのときの舞台よりも若干フレッシュな空気感があると思っていますし、それらを皆さんにお届けできることにワクワクしています! ーーそもそも本作のオーディションを受けようと思った理由やきっかけを教えてください。 ハリー・ポッターという役を人生の中で演じられる機会は、このオーディションを逃すともう2度とないと思ったんですよね。だから結果がどうであれ、一度はトライしてみたいと思ったんです。正直な話、それまでハリー・ポッターは、あまり観てませんでした。ですが、全世界で作品が愛されてることや役の重みは理解していたので、やってみたい!と。 ……実際にハリーに選ばれて、キャストが発表になったときに、意外と「あの少年期をどうやってやるの?」と聞かれました。この舞台が19年後の話だということを知らない人がたくさんいることを痛感しました。僕がハリー・ポッターをやるということで、改めてこの舞台のことを知ってくださった方には、19年後の世界観を描いてるんだということをしっかりお伝えしたいし、19年後の父親になったハリー・ポッターの世界だからこその面白さを感じてもらいたいですね。 ハリー・ポッターについて、どこか子ども向けのエンターテイメントという印象を持たれている方もいると思うんですけど、確かに魔法がたくさんあって、子どもが純粋に楽しめる舞台ですが、大人の方が観てもすごく共感できるポイントが描かれているので、年齢問わずたくさんの方々に楽しんでいただけるはずです。 ーーこれまで2カ月間お稽古を重ねてきました。どんなことが印象に残っていますか? 僕は海外スタッフに演出をつけていただくのが初めての経験でした。日本の演劇の世界でも、限られた稽古時間の中で、細かく演出をして、本番を迎えますが、今回は2カ月という普段より長い稽古期間がありました。その中で海外のクリエイティブスタッフの方が言っていたのは「役の核になる部分をきちんと埋めていこう」ということです。動きの演出ばかりではなく、それぞれのキャラクターの内面を紐解くことにここまで時間を割いてくれるんだというのが、正直びっくりしましたね。 例えば、台本に書かれているセリフがあるじゃないですか。「あなたのキャラクターはどうしてこのセリフをそういう風に言ったの?」ということを絶対に逃さない。今まで経験してきた演劇でもそういう確認はあったと思うんですけど、分からないことを分からないまま終わらせないんですよ。「ちょっと分かりません」というと、「OK。全然正解を求めていないから、今感じているあなたの感覚や印象を教えてほしい」と丁寧に紐解いていくんです。 今回の『ハリー・ポッターと呪いの子』の舞台は、世界中で上演されているからこそ、動き一つをとってもやらなくてはいけない決まりごとがたくさんあります。ですが、「決まりごととしてあるから、それをやってくれ」という演出は絶対にしない。むしろ「確かにそういう風にしてくださいというオファーはしているけど、あくまで芝居の延長で、例えばそのキャラクターが後ろを向きたいと思うのなら、その後ろを向く動機を埋めてほしい」と言われるほど。いやぁ、プロの仕事をされている感じがしますよね。 彼らは日本で演出をつけ終わったら、また違う国で演出をするために、日本国外へいってしまうわけです。「本番が始まってある程度ランニングし始めたときに、どこかで疑問が生まれたり、不安が生まれたりしたときに、僕らが渡したノートを思い出してほしい。そうしたらその役の核に戻れて、必ず芝居の役に立つから」と言ってくれて。 ロングラン公演で、身体がしんどくなったり、気持ち的に大変になったりしたときにノートを思い出すと、その役にまた立ち戻れる。そのために時間を大事に割いていると知って、感動しました。 ーー動きの指定も多いけれど、役の核となる部分を見つけていく稽古だったゆえに、ある意味吉沢さんらしいハリーが出来上がっているわけですね。 そうですね。僕は今年2月にイギリスに観劇しに行って、ハリー・ポッター役の俳優とお話して、「これからハリー・ポッターを演じていく上で何か大切なものがあったら教えてほしい」と聞いたら、「君のハリー・ポッターをやった方がいい。すごくそれを楽しんだ方がいいよ」と言われたんです。 そのときは確かにその通りだよなと思ったんですけど、稽古場に入ってから、その言葉がよく理解できたんですよね。クリエイティブスタッフの方がたくさんくれたノートを自分なりに解釈して、自分が発するものはこうなんだと信じる。そうして、自分なりのハリー・ポッターが作られていく。いろんな方からいただいた言葉が、ようやく点から線になり始めた感覚です。 ーー先ほど、役の核となる部分を作るお話をいただきましたが、稽古場ではWキャストの平方元基さんなどとはどんなお話をされて、どういう風に役を深めていかれたのでしょう? 僕は、Wキャストの経験も今回が初めてで。初めは一つの役に対して、誰かと一緒に作っていくと思ってなかったんです。それぞれが「吉沢ハリー」「平方ハリー」として向き合っていくのかなと思っていたんです。 でも、稽古初日にカンパニーで集まったときに、何かよく分からないけれど、安心感がありました。そして稽古を重ねて1週間ぐらい経つと、もうカンパニーのみんなが打ち解けあっていた。1年目からこの舞台についているスタッフさんも「もちろん1年目2年目もいい結束感があったんだけど、3年目は自然に繋がりあっているような空気がある」と仰っていました。 「○○さんの心をノックしよう」といった、コミュニケーションの面で頑張る必要がなかったんですよね。だからこそ、稽古場で芝居の話はもちろん、芝居以外の話もたくさんしましたし、稽古が終わったあとにご飯を食べにいくこともあって、気がついたらいいカンパニーになっていたんですよ。今回のカンパニーは、さまざまなバックボーンを持っている人たちが集まっているんですが、誰かが自分のバックボーンを押し付けるようなことがないし、役者同士の良好な人間関係は役にも生きてくると思うんです。 そうそう、息子のアルバス・ポッターたちも、全力で役に向き合ういい子たちです(笑)。実際、僕には子どもがいないのですが、この間の父の日に(渡邉)蒼からチョコレートをもらって、「こういう感覚なんだ」とじーんとしました。それに(佐藤)知恩も誕生日だったので、マッサージガンをプレゼントしてあげたんです。若いから全然疲れていないと言っていたんですけど、いくら若いとはいえ、だんだん疲労が蓄積しているようだったので。